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事業における地球温暖化防止の取り組みの重要性

2009年03月03日 熊井 大


 過去2回、私が以前に三井住友銀行のニュースレターに寄稿した内容に対して、この欄で補足を行った。今回は、参考文献にある第11号において、「排出権付商品の開発テクニック(後編) ~CSR目的の排出権購入とは~」と題して寄稿した内容について補足すると共に、本稿(クローズアップテーマ「地球温暖化」のコラムで私の執筆してきた内容)をまとめたい。

 企業が実施する地球温暖化防止の取り組みは、大きく2つに分けられる。一つは、自社における取り組みであり、もう一方は、事業における取り組みである。自社における取り組みは、自社の環境方針を立て、環境マネジメントシステムを導入し、ISO14000を取得する。オフィスや工場においては、新エネ・省エネ対策をほどこし、エネルギー効率の向上や環境負荷の低減に努める。輸送分野においては、低公害車を導入し、エコドライブに努め、場合によっては、円滑な輸送システムを構築するため、輸送計画を支援するようなITシステムを導入する。最後に、社会的にも自社が地球温暖化防止の取り組みを実施していることをアピールするために、クールビズなど、チームマイナス6%の活動に参加したり、地球温暖化防止の教育・啓発という観点からステークホルダーミーティングを開催する企業も増えている。

 自社における取り組みは当然重要であるが、近年私が考えるのは、企業において真剣に事業における温暖化防止の取り組みを戦略的に考える必要があるし、むしろ、そのことの方が重要な場面も多いと感じている。三井住友銀行のニュースレターで取り上げた自動車メーカーや銀行の例から考えても、国内の自動車によるCO2排出量は約2億t-CO2/年の中で、たかが(されどとも考えられるが・・)数百万t-CO2/年の排出量の削減に努めるよりも、より低公害な自動車を開発することの方が社会に与える便益は大きい。また銀行であれば、メガバンクであっても、一行あたり10万t-CO2/年の排出量の中で、限られた削減を講じるよりも、地球温暖化防止や環境配慮に向けた投融資を重点化し、国内企業における環境配慮化を加速させるよう、支援をすることの方が地球温暖化防止に向けて効果が大きいと考える。

 この1年間で多くの企業とディスカッションしてきたが、「CSR(社会的責任)=自社における温暖化防止の取り組み」と考えている企業が多く、ややもすると「うちはちゃんとやっているんで、問題ないですよ。」という反応も多い。CSRとは何か、特に温暖化防止に関しては、再度考え直す必要があるのではないか、というのが近頃の私の問題意識である。自社における取り組みを行うことは当たり前であって、地球温暖化防止は社会全体で取り組まなければならない課題であり、その課題に貢献するため、各社の事業として何ができるのか戦略的に考えることこそ、地球温暖化防止に向けた真のCSRではないかと私は考えている。

 2007年12月に弊社は「地球温暖化と伸びるビジネス」という本を東洋経済新報社から出版した。当時、執筆に携わっていた時からも、自社における温暖化防止の取り組みは各社にとってリスクヘッジであって、必ずやるべきことである。事業における温暖化防止の取り組みを各社が真剣に考え始めることによって、考えた企業のビジネスが伸びる可能性が高いと考えていたが、各業界のトップシェアを占める上位数社は当然考えているが、残りの企業でどこまで真剣に考えているのかわからないのが現状ではないか。これからの私の仕事として、真剣に温暖化防止に向けた事業のあり方を考えていない企業に対して、考えてもらうよう仕向けていくことが重要であるし、ライフワークにもなりえるのではないかと考えている。

【参考文献】
・三井住友銀行;「気候変動と排出権取引」ニュースレター第11号,p6,2009年
・日本総合研究所;地球温暖化と伸びるビジネス,東京経済新報社,2007年12月
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