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10年後に受ける気候変動による物理的影響

2009年02月17日 黒澤仁子


 IPCC第4次評価報告書第1作業部会報告書では、環境と経済の両立した社会であっても、化石燃料に依存した社会でも、おおよそ2020年には気温が0~1℃上昇すると予測しています。そこで、10年後、日本は気候変動によってどのような影響を受け始めるのか整理しました。

【0~1℃気温が上昇したら発生すると予測される主な事象】
●食料分野  
・米の品質低下
・米の減収(関東以西)、増収(東北・北海道)
・麦/大豆の品質低下、収量低下
・家畜の受胎率低下、乳量低下
・漁業の漁期の遅れ
・養殖適地の北上化、感染症増加

●水資源  
・アオコの異常発生

●生態系  
・湿原の乾燥化
・高山植物/ブナ林/亜高山帯/亜寒針葉樹林の減少、松枯れ
・桜/梅等の開花の早期化、落葉の遅れ
・珊瑚の白化

●防災
・豪雨、台風等による浸水被害(特に瀬戸内海、三大湾の被害は大きい)
・渇水による地下水利用増加に伴う地盤沈下の発生
・海面上昇による高潮被害
・台風の進路変更による想定していない地域での高潮被害
・海面上昇による海岸侵食、砂浜喪失

●健康  
・感染症媒介生物の増加(東北/北海道への北上化、四国以南での病気の流行)
・熱中症患者の増加(特に高齢者)
・循環器疾患、呼吸器疾患による死亡率増加(特に高齢者)

●国民生活
・高温化によるエアコン使用時間延長による電気料金の高額化
・季節感の喪失

※事象は各分野における予測に基づいている。
(出所:環境省「気候変動への賢い適応」より日本総研作成)

 図表より、10年後、多くの影響が発生することが分かります。これらの事象は気候変動の直接的な影響ですが、間接的な影響を考慮すると被害の及ぶ範囲はさらに大きいことが考えられます。例えば、浸水や高潮被害によってインフラが分断されることにより、物流が停止する可能性があるのです。
 これに対して企業がすべきことは、自社の受ける物理的影響の被害を軽減し、また、物理的影響をビジネスの機会に転換することです。例えばBCP(事業継続計画)の策定がその一つです。これは、災害等の危機が起こっても業務が中断せず、中断しても目標復旧時間内に再開させるための自社の備えを規定したものです。アメリカ同時多発テロの際にはその効果が証明されており、内閣府は10年後には全ての大企業、半数の中小企業がBCPを策定することを目標にしています。しかし現状では大企業は64%、中小企業は28%に留まっています(平成20年内閣府「企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」)。
 気候変動への適応は企業の持続可能性な発展のためになくてはならないことと言えるでしょう。
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