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排出権を活用したマーケティングのススメ

2009年01月29日 熊井 大


 前回から、私が以前に三井住友銀行のニュースレターに寄稿した内容に対して、この欄で補足をしている。今回は、参考文献にある第10号において、「排出権付商品の開発テクニック(中編) ~マーケットを調査せよ~」と題して寄稿した内容について補足する。

 まず、排出権付商品の開発について、私の認識では、現在はちょうど「業界で一巡した」、あるいは「一息ついた」状況ではないか。2008年は各種新聞や雑誌等がこぞって企業の排出権付商品を報道し、それに呼応するように多くの企業が排出権付商品の開発に取り組んだ、いわゆる排出権付商品の元年というべき年であった。一通り排出権を付けることが可能な商品には、様々な業界のいずれかの企業が付けて商品化し、その商品を各種新聞や雑誌が紹介した。結果として、排出権自体の価格を「広告宣伝費」と比較した場合、1000トン購入したとしても200万円~300万円で、高くても400万円程度であったため、各種新聞や雑誌、インターネットが取り上げた場合、その商品の宣伝になるため、コストとして考えても十分にペイする状況だった。

 前回、省エネサービスについて取り上げたが、省エネサービスに排出権を付けると企業内の「コスト削減」が図られるため、結果的にペイする。現状、「広告宣伝費」としてペイする状況がなくなりつつある中で、新たな考え方として、「マーケティングコスト」としてペイする状況が成り立つと企業内で排出権付商品の開発を企画する時に整理がつきやすいため、ニュースレター(第10号)で軽く提案した。メーカーが自社製品の使用状況(CO2排出量や原単位の実測)を把握するのに、いろいろと苦心しているため、商品に排出権を景品としてつけて、その代わりにアンケートを回収する方法をニュースレターで取り上げたが、レンタカーから排出されるCO2を排出権でオフセットすることで自動車の燃費を把握したり、環境家計簿や省エネナビのデータをもらうかわりにオフセットする方法など、アイデアはいくつもあるが、なかなか取り組まれないのが現状のようである。

 CO2排出量のデータを集める作業は、個人情報ほどではないが、思いのほか難しい作業であるため、上手く排出権を活用して進めることができれば興味深い。また、集めたCO2排出量のデータを、今後、企業や国・自治体等に販売するビジネスが盛んになることが考えられるため、このような視点からもこの分野に注目することが、重要になるだろう。

【参考文献】
・三井住友銀行;「気候変動と排出権取引」ニュースレター第10号,p6,2008年
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