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太陽光発電購入における個人の意思決定要因とは?

2009年01月20日 黒澤仁子


 1月19日の日本経済新聞に掲載された太陽光発電に関するアンケート結果によると、太陽光発電に関心がある人は約80%に及ぶことが分かりました。その理由は、「環境に優しいから」が59%である一方、自由回答では「電気代の節約になるから」と答えた人が多く、日本経済新聞では「景気悪化の下で、自然エネルギーの利用によって光熱費を抑えたいという思いがにじむ」と結論付けています。しかし、「電気代の節約になるから」という理由は、景気悪化特有の要因ではないように思います。
 太陽光発電を設置する際、約200~230万円の高額な初期投資に対して、ほとんどの人は銀行、信用金庫、信販会社、地方自治体が販売・提供する融資を受けます。中でも、信販会社による割賦販売を利用する人が多いのが現状です。

・銀行、信用金庫:融資期間約8年、固定金利/変動金利、金利水準約3~4%、担保なし
・信販会社(割賦販売):融資期間15年、固定金利、金利水準約3.5~4%、担保なし
・地方自治体(制度融資):融資期間20年、固定、金利水準1~2%、担保なし

 3つの商品の大きく異なる点は融資期間であり、設置事業者によると、これが割賦販売を消費者にすすめる最大の理由です。それは、消費者の購入の意思決定には、「毎月の光熱費削減額は毎月のローン支払額を上回るか」が作用するからです。つまり、銀行の融資期間では毎月の光熱費削減額をローン支払額が上回るため、購入の意思決定が働かない可能性があるのです。なお、地方自治体が提供する制度融資は民間金融機関と比較して金利水準は低いものの、手続きの煩雑さから、年間数件程度の利用にとどまっています。
 また、アメリカのカリフォルニア州では、州の太陽光発電政策を活用して、企業が、リース料金が削減額を下回るようにリース料設定するシステム取り入れた個人向け太陽光発電リースを販売し、太陽光発電の設置が増加しています。
 1月12日の日本経済新聞に、石油世界最大手エクソンモービルのCEOが、GHG排出量削減には炭素税が望ましいとの見解が掲載されました。これは業界に有利な着地点を模索する戦術と言われています。多くの個人も同様に、GHG排出量削減という目標の前に、自己の利益を考慮した意思決定が働きます。将来、GHG排出量削減と利益がトレードオフの場合でも、企業も個人も前者を選択することを願いつつ、現実には、自己の利益を配慮するという意思決定を認め、これを利用したGHG排出量削減手法を取ることも必要であると思われます。
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