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温室効果ガス排出量(速報値)とは何か
2008年11月18日 熊井 大
先週、政府(環境省)は、2007年度の日本国内における温室効果ガス排出量を発表した。結果は、NHKや日経新聞等の各種報道があったとおり、2006年度に比べて、総量として2.3%増加する結果となり、京都議定書の日本国の達成に向けて、状況が悪化している。この結果についての評価は、各種報道や研究機関、NPO等にお任せするとして、そもそもなぜ、政府が温室効果ガス排出量を算定し、公表しているのか、知らない方も多いので、このコラムで解説したい。
日本国内における温室効果ガス排出量の算定は、京都議定書を批准する前から、国立環境研究所が率先しておこなっていた。2005年2 月16日に京都議定書が発効し、第七条において、先進国(附属書Ⅰに掲げる締約国)は毎年国連に温室効果ガス排出量を提出する義務が課せられた。この提出する資料を、専門的には目録(インベントリ)というのだが、国連に提出すると同時に、国内にも広くその活動を公開し、政府が温室効果ガス排出量の”確定値”として発表している。
【GIO 温室効果ガスインベントリオフィス】
京都議定書上は、”年次”目録であるため、年1回、各種統計資料を基に排出量を算定すればよいのであるが、統計資料の集計時期等の関係から、当初は当該年度の温室効果ガス排出量を算定するのに1年強の期間が必要であった。その後、京都議定書の目標達成に向けて、排出量の算定と公表の時期が遅いのは不都合があると、各方面から意見・要望が政府に寄せられ、若干精度が落ちる可能性があるが、当該年度の半年後に”速報値”を発表する運びとなって、先日のような発表がなされるようになった。
ちなみに、日本国の場合、各種統計の都合上、年度(4月~翌年3月)単位で温室効果ガス排出量を集計している。国連からは”年度”の報告で了解を日本政府は得ているので問題はないが、世界的にみて極めて珍しい集計方法であることを補足したい