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排出権価格が上昇しています

2008年06月25日 三木優


 このコラムを作成している2008/6/25における、ECX(EUの排出権取引市場)のCER現物価格は、1トンあたり20.3ユーロ程度となっている。1ヶ月前は17ユーロ程度であったことから、約15%程度の価格上昇となっている。また、これまで10ユーロ程度であった先物CERの値段についても、上昇傾向にあり、排出権価格は全体的に上昇傾向を示している。

 この要因としては、以下の3点が主な理由として挙げられている。

・原油価格と天然ガス価格は連動性があり、原油価格が上昇すると天然ガス価格も上昇する。一方で石炭価格は原油価格の影響を受けにくいため、原油価格が上昇しても価格は大きく上昇しない。
 その結果、石炭火力発電を持っている事業者は、天然ガス火力発電にて作られた電気を買わずに、自前の石炭火力発電にて発電し、そこから出てくる余分な二酸化炭素について、排出権を購入して対処している。
 まとめると、原油価格上昇→天然ガス価格上昇→石炭消費量増大→排出権需要増大→排出権価格上昇と言う事が起きている。

・CDM由来の排出権は、当面は2012年末までの第一約束期間に使う必要がある。そのためプロジェクトの国連登録が遅れたり、プロジェクトの実施が遅延したりすると第一約束期間において使える排出権は減少してしまう。
 最近発表された、国連機関のレポートや情報提供会社のレポートでは、上記のような理由により、従来の予測よりも排出権の発行量が減少するとしており、それを受けて排出権が足りなくなるとの見方も出てきたため、排出権価格が上昇する事になった。

・現在、CDM由来の排出権を買っているのはEU政府・企業と日本政府・企業である。先日、米国議会において審議されていた、米国内排出権取引制度の内容が一部改訂され、条件付きで米国内排出権取引制度においてもCDM由来の排出権を使う事を認めた(法案自体は、後日、結局否決された)。
 これにより排出権の需要が大きくなる事から、供給量が減る場合と同様に、排出権価格が上昇する事になった。


 排出権価格の予測は非常に難しい事であり、今後の価格動向については何とも言えないが、原油価格の上昇が続く限りはしばらくこの上昇傾向は続く可能性がある。
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