コラム「研究員のココロ」
CO2を減らし、物流コストも減らそう!
2008年11月10日 下村 博史
景気後退局面に入り、企業における経営効率化の重要性が増している。本稿では経営効率化の有効な手段の一つとして、「環境対策を切り口」とした物流コスト削減のアプローチについて紹介したい。
物流のムダ取りに環境対策が有効
一見、CO2の削減と物流コストの削減は無関係のように思われる。しかし実際は、「物流コストの削減」と「物流における環境対策」は両立する。それは、企業物流の環境対策がさまざまなムダを省くことからスタートするためである。
では物流活動におけるムダとはどのようなものがあるのだろうか。代表的なものは、トラック輸送の燃料のムダ使いであろう。物流ではトラック輸送が多用されるが、急発進や急停車などによって、エネルギーロスが生じ、ムダな燃料を消費することにつながる。積載のムダもある。4トン積載できる車に2トンの貨物しか積んでいなければ、半分の2トンはムダになってしまう。また、本来は1回で運べるはずのところを、何回も往復輸送するといった輸送ルートのムダもある。貸し切りトラック便で配送した場合、空のまま帰ることがあるが、これは空車のムダである。
このように物流における様々なムダを取り除くことは、環境対策=グリーン物流の第一歩である。そしてそれは、物流コストを下げることにもつながる。
たとえば、燃費に配慮した運転方法である「エコドライブ」を実施した場合、燃費が1割から2割改善できる。トラック輸送では原価の2割程度が燃料費といわれている。仮に「エコドライブ」によって10%の燃費改善ができれば、それはすなわちトラック輸送コストを約2%削減できることを意味する。先日もある乳業メーカーから、同社が取り組んだエコドライブの成功体験について聞いた。同社のグループ企業である物流子会社、および販売会社では約5千台の配送車両を抱えている。グループ企業も含めて推進したエコドライブの結果、燃費を約11%改善することができたそうだ。
「エコドライブ」を徹底するには、組織的な活動として展開する必要もあり、決して容易ではない。しかし、一人ひとりのドライバーが「エコドライブ」を心がけるだけでも、CO2の削減と、物流コストの削減とが両立することがおわかりいただけるだろう。
包装資材の簡素化・リターナブル化
企業物流では、多くの包装資材が利用されている。商品を保護し品質を維持することと、作業の効率を高めることが目的である。では具体的にどのような包装資材が使われているだろうか。
物流の現場を見れば、次のような包装資材が使われていることがわかる。
段ボール箱(板紙)
パレット(木製、プラスチック)
コンテナ・輸送容器(プラスチック)
シュリンクフィルム(ポリエチレンシート)
飲料など液体用容器(PET)
包装資材にかかわる環境負荷を減らすためには、何をすればよいだろうか。まずは包装資材の使用量を減らすことである。たとえば簡便な包装資材を使うことや、包装資材を省略することが考えられる。次に、再利用できる包装資材を使うことである。いわゆるリターナブル包装の利用である。
我々がもっとも多く目にする包装材は、段ボールである。この段ボール原紙の古紙含有量は9割を超えていると言われている。リサイクルの進展によって、森林資源の保全の面では効果は上がるのだろうが、一方で、回収物流の発生、つまり新たなCO2の発生につながっている面も無視できないのではないだろうか。
求められるリバースロジスティクス
段ボールの例のように使用済みのモノを回収する「リバースロジスティクス」もグリーン物流の大切な課題である。
循環型経済への進展を目指して、リサイクル法が整備されてきた。リサイクル法は業界ごとに制定されており、容器・包装、食品、建設資材、家電そして自動車などの業界または製品で、リサイクル法が制定されている。このリサイクルの仕組みをうまく回す過程で、使用済みの製品を回収する物流、処理済みの資源を再利用する施設へ移動するための物流、さらに最終処分場へ移動するための物流が発生する。
こうした回収物流に多大なエネルギーを使っては意味がない。そこで、家電リサイクルや自動車リサイクルに見られるように、メーカー同士が連携して、回収のための共同物流が実施されている。共同物流の仕組みを使い、回収を効率的に行わなければ「リサイクルによって別の環境負荷を増大させる」という新たな問題を引き起こしかねないのである。
さいごに
私は経営コンサルタントとして、企業物流のコスト低減を支援している。しばしば、「物流コスト削減の取り組みが壁にぶつかった」とか、「これまでのように、物流コスト低減のよいアイディアが見つからない」という声を耳にすることがある。
もしそういう局面にある読者がおられたら、グリーン物流を切り口に、新たなコスト低減の余地を発見していただきたいと思う。
