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コラム「研究員のココロ」

自治体に迫る外郭団体再編の波
~外郭団体について包括的な診断を~

2009年05月01日 


外郭団体再編のうごき

 今、全国の自治体は出資・出えん(出捐)する団体に対する本格的な見直しを迫られている。この機運は、自治体の財政の健全化という側面と公益法人制度の改革という2つの方向性から高まってきていると考えられる。
 まず、自治体の財政の健全化という側面から見ていくと、地方公共団体財政健全化法(以下「健全化法」という)が平成21年4月に本格施行された。同年秋には平成20年度決算に基づく財政指標が公示され、基準に基づいて、早期健全化団体及び財政再生団体の指定が行なわれる。注目されるのは、健全化法の指標の1つである将来負担比率。三セクや公社なども含め、自治体の一般会計等が将来的に負担する債務の標準財政規模に対する割合が今後の行財政運営に大きく影響を及ぼすため、三セク等の事業内容や財政状況のチェックは必須のものとなるだろう。一方、三セクの抜本的な改革のための起債が可能になったことは、自治体の三セク処理を後押しするものと思われる。
 次に、公益法人制度の改革について見ていくと、平成20年12月に公益法人制度改革関連3法が施行され、これまでの社団法人・財団法人は、事業の性格等の要件により、公益社団法人・公益財団法人と一般社団法人・一般財団法人に区分されることになった。すでに、財団法人・社団法人の新しい種別への移行手続きの動きもはじまっている。
 以上のような流れを受け、三セク等や、社団法人・財団法人の見直しの必要性が高まっているが、「どのように見直しを行なっていけばいいのかわからない。」「現在の数値上は問題がなさそうでも改善の余地のある団体は存在しないのか。」といった悩みを抱えている自治体も多いのではないだろうか。そこで、自治体が関与する外郭団体の意義や課題を効率的にあぶりだすための「健康診断」として、外郭団体を包括的に診断する手法を提案したい。

「地域特性・公共性」と「事業性」:外郭団体包括診断の2つの視点

 外郭団体の再評価を包括的に行う際には、大きく2つの視点をバランスよく組み合わせた基準を設定することが重要である。1つは、当該団体の事業が地域ビジョンにおいて果たしている役割や、他の団体では発揮できない機能を有しているのかを検証する「地域特性・公共性」、もう1つは、当該団体の経営状況を客観的に判断する「事業性」で、各指標について評価基準を設定し、得点化することにより、包括的な診断が可能となる。





■地域特性・公共性
 地域特性・公共性を把握するためには、当該団体の事業内容や活動分野が自治体の都市ビジョンにどのように位置づけられているのかを検証する必要がある。当該団体の事業内容や活動分野が都市ビジョンに記載がない場合、当該団体に自治体として関与することが適正か否か、検討の余地がある(その意味では、総合計画など、自治体のビジョン策定の重要性も高まっていると言える)。
 また、地域ビジョンの中で重要性が確認されたとしても、果たして行政として関与すべき事業なのか、事業の実施が地域ビジョン達成に十分に貢献しているのか、民間事業者の活動を阻害する結果になっていないのか、行財政改革の指針や地域の民間事業者の洗い出しなどを行なって検証していく必要がある。
 こうした分析を行う際には、同種の外郭団体に出資・出えん(出捐)する類似都市の状況も把握し、比較していくことも有効であると考えられる。

■事業性
 事業性については、事業としての健全性をはじめ、収益に占める行政からの補助金の比率、投下資本に対する利益の割合、職員1人あたりの収益など、データに基づいた分析を行うとともに、今後の事業環境の変化要因についても考慮する必要がある。「地域特性・公共性」の場合と同様、類似都市の状況との比較は、当該外郭団体の置かれている状況を把握する上で重要な要素となる。


 各外郭団体の「地域特性・公共性」「事業性」について、統一的な基準に基づき数値化した結果は、図表化してみると、各団体の大まかな位置づけがわかりやすくなる。



包括診断のメリット

 外郭団体を包括的に診断することにより、どのような効果を期待できるのであろうか。
 まず、外郭団体に対する自治体の関与の現状を把握することができるという利点が挙げられる。特に、「地域特性・公共性」は、社会・経済環境の変化により大きく変わるものである。「創立・設立当時は自治体が関与することに意義があった」団体でも、その後の環境変化により、「役割を果たした」あるいは「意義を失った」ものもある。その意味でも、「地域特性・公共性」の検証は定期的・継続的に行う必要がある。
 次に、事業性を検証することにより、財務面での特徴や課題が明らかになることが挙げられる。特に、類似都市の同種の団体と比較することにより、それまで悪いとは思っていなかった財務状況の欠陥が明らかになる場合もあり、改革・改善を行う良いきっかけとなるのではないだろうか。
 さらに、外郭団体そのものの特殊性を把握することができることも考えられる。当社がこれまで行った包括診断の際にも、当該自治体では当たり前のようにあった外郭団体が、他自治体には存在しないということがあった。外郭団体の「特異性」を理解することによって初めて、その存在意義や今後の方向性について、より踏み込んだ議論ができるのである。
 以上の視点を総合的に分析することにより、さらに掘り下げて調査すべき団体を効率的に明らかにすることができる。

 自治体による外郭団体の包括診断は、外郭団体の再評価と方向性決定のための第一歩に過ぎない。「地域特性・公共性」が高く「事業性が低い」という結果が出たとしても、第三セクターと財団法人では見直しの方向性は異なってくるからである。しかし、こうした包括診断をもとに、さらなる精査が必要と思われる団体については掘り下げたデータ収集・分析を行い今後の関与の方向性を決定し、必要に応じて、改革や再編を行うことこそ、行政の効率化と地域活性化の両立の実現につながっていくはずである。各自治体には、一過性ではない、外郭団体を包括的かつ継続的に検証する体制の整備を望みたい。
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