クローズアップテーマ
イメージする力
2007年09月04日 木村典宏
ここではコンサルティング担当者が日々のコンサルティング業務の中で気付いた事を掲載していきます。
第7回「イメージする力」
世の中ではWeb2.0と騒がれているが、企業経営層からは「情報システムをうまく使いこなせない。」という相談が絶えない。そこで、筆者の頭の中では、ビジネスシーンで情報システムを有効に活用するために必要なスキルとは何だろうか、と常に渦巻いている。
出来上がったシステムに不満があっても、動き出したものは手を入れるのが困難になるため、作り上げる過程を見直すことが課題である。
教科書的には、システム開発における方法論か技術論や、計画段階における最新の経営理論の反映が重要になるようなイメージがあるようだが、いずれも利用者の立場、目線の議論にならないことが多い。情報システムを利用する側の視点に立った場合、もっと実質的に重要なことがあるように思えてならない。
最近ようやく、そのもどかしさを解消する可能性がある言葉が思い浮かぶようになった。それは、「イメージする力」である。
究極は、全体を俯瞰しながら利用者になりきって、新たな情報システムを活用するシーンをどれだけリアルに思い描けるかが、成功へのキーファクターではないか、と考えている。
システム開発プロジェクトでは、設計資料や報告、確認資料が多数作成されてくるが、作った本人以外は愛着がわくという類のものではなく、なかなか書いてある内容以上のことをイメージする力が引き出せない。
従来からこの「イメージする力」を引き出すためのシステム開発方法論としてプロトタイピング手法が存在するが、残念ながらユーザインターフェースの確認レベルに止まっていることが多い。
もっと「やわらかい」資料で活用シーンをイメージさせる検討が必要だと思う。「イメージする力」を引き出すには、ストーリーが必要である。
このシステムが現実化した場合、誰がどのような過程を経て幸せになるか、今まで不可能なことが可能になると、自分はどれくらい成長できるか、等のイメージを膨らませることで士気を高揚させる必要がある。
プロジェクトサクセスストーリーとして読み物的なものを作成し、メンバー全員で意見交換するような試みが有効ではないかと考えている。
実際に、新しいシステムを開発するというプロジェクトは、非常にエキサイティングなことであるし、もっとプロジェクトメンバーが興奮し、楽しめるプロセスが必要である。
その前に「イメージする力」をどのように養うか、ということが問題になるが、是非とも読書を進めたい。活字を追いながら、頭の中でどんどんイメージを膨らませて、自分だけのバーチャルな世界を創り出すことが出来れば、目に見えないものを形にしていく、情報システムの開発にもきっと役に立つと確信している。結果、筆者は今日も満員電車の中で活字を追っている。
以 上
※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。