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web2.0とユビキタス

2007年07月10日 中原隆一


ここではコンサルティング担当者が日々のコンサルティング業務の中で気付いた事を掲載していきます。

第6回「web2.0とユビキタス」

 ここ1年前ぐらいからweb2.0という言葉が社会生活やビジネスの場で多く聞かれるようになった。この言葉には明確な定義はないようで、webを介して行われている様々な新しい事象や活動等を総称しているものと考えられる。たとえばweb上で特定の商品やサービスについての多数のコメントを参照できることや、特定の趣味や嗜好を持つ人々の間でweb上のコミュニティ一が組成されるというような現象などを総称して表している言葉である。
 一方で少し前はユビキタスという言葉が重要なキーワードとして広く使われていた。今でも重要なキーワードであるが、言葉の旬としてはweb2.0に軍配があがる。このユビキタスは「いつでも、どこでも、誰にでも」という言葉に訳され、情報通信技術を利用して経済、社会等の活動において、時間や空間、個人差の制約を極力緩和あるいは排除して便利な世の中をつくるというのがおおよその意味と考えられる。
 この旬の言葉の移り変わりにはインターネットの普及拡大とそれを利用したサービスや技術の発展が影響している。Web2.0と称されるようなサービスや機能を自由に活用するためには、インフラとしての回線速度・容量、PC能力等が必要であり、またこれらの機器等を多くの人々が利用できるためには安価で簡単であることが必要となる。そのような環境変化に検索や情報配信に関連する技術やサービスが加わり、web2.0と総称される現象が生じていると考えられる。実はこれらのインターネットの普及とそれを利用したサービスや技術の発展はユビキタスの成果なのだが、ユビキタスはインターネットの普及拡大で実際の経済社会つまりリアル社会の利便性が向上することに焦点を当てていた。一方web2.0といわれる現象はネット空間にリアル社会とは異なる新たな仕組みを構築しようという動きに着目している。例えばロングテールと呼ばれる現象では、ネット空間の特性を利用してニッチな商品やサービスの事業が可能になっている。最近ではネットの仮想空間の中で仮想通貨を使い、実際にビジネスを行うことまで行われ、新たな経済圏、生活圏を形成する試みまで進行している。
 つまりユビキタスはリアルの生活を便利にしようとした取り組みで、その結果ネット空間の利便性は確かに高められているのだが、さらにネット空間はその利便性を活用してweb2.0という現象にみられるようなリアルの社会とは異なる新たな仕組みを作り出そうと動き始めていると解釈される。
 一般に我々は情報通信技術の発達による社会や経済の変化を一次元的に捉えて新技術の機能に沿って変化する、進化するという予測や推測を行うことが多い。しかし実際には変化は多面的に多方向に多次元に展開される。また技術革新に対する人間の反応というのは思いもよらない方向に進展することが多い。
 ユビキタスを提言した時点で現在のweb2.0で言われる現象をどこまで予想できていただろうか。我々は技術革新によるビジョンや未来を語ることに関わることが多いが、決して易しい作業でないことを痛感させられる。

以 上




※コラムは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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