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コラム「研究員のココロ」

新たな地域活性化の担い手「電子マネーカード」

2008年07月07日 高村 茂


公金のカード収納の次に来るもの
~決済に留まらない電子マネーカードの魅力~


 公金のクレジットカード収納については、平成18年度の藤沢市軽自動車税を皮切りに、宮崎県の自動車税、大阪府及び枚方市の手数料と続き、オンライン収納の道筋ができつつある。 一方、事前にカード情報を登録させる継続払いとして、東京都及び丸亀市等においては水道料金の、三重県玉城町においては13の税・料についてのカード収納が可能となっている。
 このように、公金のカード収納については、実績が蓄積されつつあるが、クレジットカードゆえの課題もいくつか指摘されているところである。例えば、

  • 数百円といった金額の収納にクレジットカードを導入する必要があるのか?(クレジットカードでは通常の平均利用単価が1万2千円程度であり、また都度ネットワークを介して与信確認を行うコストをかけている)

  • 与信がないためにクレジットカードを保有できない市民が必ず存在しており、さらに平等なツールはないのか?

といった内容である。
 一方で、首都圏・関西圏を中心に交通機関のIC乗車券(Suica/PASMO/PiTaPa等)が相当数普及しており、主要なIC乗車券は電子マネー機能を保有している。また、電子マネー市場を牽引してきたEdyに加え、国内流通大手のイオンやセブン・アイもそれぞれWAON、NANACOを発行し、これらはカードだけではなく携帯電話のアプリケーションとしても利用できる環境が整っている(ここでは、電子マネー機能を持つICカード及び携帯電話を合せて「電子マネーカード」と言う)。この電子マネーカードを市役所をはじめとする公共施設における手数料等の支払いに使用できれば、カード一枚ですべての決済が完了して現金は不要、という高齢者等にも分かり易い「キャッシュレス市役所」の仕組みとなるとともに、前述クレジットカードの課題も解消できるものと思料される。
 すなわち、電子マネーカードによって、役所内で発生した支払いも完結できることが市民にとっては大いに便利であり、今後行政としてもその導入を検討すべき時期に来ているものと考える。

 このように、決済に関して電子マネーカードの利便性は大変高いが、実は電子マネーカードは地域の生活を活性化する様々な機能を展開できるポテンシャルを有している。
 ここでは、いくつかの分野でその可能性を提示してみたい。

カード発行とポイント管理からの開放

 今多くの商店街でポイントプログラムを導入している。
 我々が以前行った調査では、何らかのポイントプログラムを利用している消費者は9割、また、そのうちの8割はポイントプログラムを通じて特典の獲得を意識しているとのデータがある。
 このように、顧客の囲い込みに効果があるポイントプログラムだが、商店街で導入するには大きなハードルがある。それは、カード発行コスト負担とポイント管理システムの導入である。
 今もスタンプ方式のポイントを発行している店舗もあるが、商店街といった複数店舗間での共同ポイント発行となると各店舗が発行したポイントを明確にしなければならない。なぜならば、ポイントの発行コストは各店舗持ちだからである。このためには、提示されたカードとポイントを結びつける仕組みが必要であり、磁気カードやICカードとポイントを管理するためのシステムが不可欠となる。ところが、これらの導入には少なからずコストがかかるため、一時的な高負担と費用対効果を勘案して導入を見送っている商店街が少なくないと言われている。
 実はここでも電子マネーカードが活躍できる。電子マネーカードには固有のID番号が与えられていることから、この番号を鍵として各カードを識別することができる。このID番号をそれぞれの商店街のポイントプログラムの登録IDとみなせば、新たなポイントカードを発行することなくポイントカードの機能を担わせることができる。この仕組みは既に品川区五反田や大田区大森では導入されており、今後地方都市にも拡大するスキームであると考える。

「電子マネー」から「地域マネー」へ

 7-8年前に、地域通貨やボランティアマネーが注目された時があった。これらは一般的な貨幣価値に置き換えにくいものを、ある特定の地域で流通する通貨として流通させようという考え方に基づいており、元々広範なエリアを対象としていないと考えるべきであるが、汎用性をめざすが故に挫折するケースが散見された。また、当時は、現在のように電子マネーカードが7千万枚以上(携帯アプリを含まない)も普及している状況ではなく、地域の価値を蓄積・流通させるインフラが十分発達していなかった。
 現在はどうだろうか。個店や地域の商店街などで発行されているポイントは、市民の生活と不可欠なものになりつつあり、消費者の側からは、航空会社のマイレージを筆頭に、相互運用性の高いポイントが歓迎されているという状況にある。
 個人的には航空会社のマイレージは、「無料航空券によって旅行に行く」という非日常的特典が魅力に映っていると理解しているが、日常的な特典はやはり生活するコミュニティの中で還元されることが心地よいのではないかと考える。
 電子マネーカードは、前項でも述べたとおり、商店街のポイントカードになることは容易である。一歩進めて、生活圏全体のポイントカードになることも可能である。日常生活の中でポイントが貯まり、そのポイントを日常生活に役立つ形で還元してもらうというものである。実はこのような地域ポイントの仕組みは、地域に存在する大型小売店等を核として地元の中小商店も含めて組成することが望ましく、大型小売店と地元商店が共存共栄するための鍵にもなるものと考えている。
 この形態に近いものとしては、神戸PiTaPaカードの「神戸ポイント」や新宿高島屋を中心に展開されている「タイムズスクエアカード」などが挙げられる。
 ここに、ボランティアマネー的な要素も付加し、一枚の電子マネーカードの中で独立したデータとして保有することも可能であると考えられることから、電子マネーカードには、貨幣価値と直結した地域ポイントプログラムとボランティアマネーの双方を管理できる機能を併せて持たせられる。

地域の活動も支援する「コミュニティカード」へ

 地域活動の中で本人確認(本人認証)をするためのカードとして住基カードがある。残念なことに、住基カードの普及は一部自治体を除いてまだまだ低いレベルに止まっている。
 また、住基カードを用いるほど厳密な本人認証を必要としないサービスも少なくない(図書館利用や公共施設利用等)。
 実は、この本人認証の機能を果たすものとして、電子マネーカードのIDが利用できる。また、その券面のデザインについて、自治体側(地域側)に委ねてもよいと言っている電子マネー事業者も複数ある。既に、自治体の職員証として電子マネーカードが導入されている事例もいくつか存在している。
 このほか電子マネーカードのIDを活用したものとして、子どもの安全情報提供サービス(駅改札を通過したID情報を電子メールで親に伝える)や商店街のロッカーサービス(ロッカーの開閉IDとして活用)も始まっている。

 以上述べてきた機能は、これまでバラバラに提供されているケースが多い。今後は、これらの機能を統合し、それぞれの電子マネーカードが持つ本来機能に加え、地域の特性を踏まえた「地域内の決済機能」「地域内の緩い本人認証機能」「地域マネー機能」を併せ持つ「コミュニティカード」として位置づける戦略が、地域活性化と電子自治体を低コストで実現する方策として有効なのではないかと考えている。
 この展開には官民連携が必須であり、我々は基本的なビジョン作りと官民連携体を目標に向かって前進させるところでお役に立てればと考えているところである。
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