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Sohatsu Eyes

環境技術とリスクマネジメント

2009年07月28日 木通秀樹



低炭素社会の実現のためには環境技術の発展が不可欠です。しかしながら、化石燃料を使わずに資源循環を行う技術などでは、安定稼動性などの問題により、事業性の悪化を招く場合もあります。このため、環境技術の開発・導入を考える企業にとって、リスクマネジメントは重要なテーマとなっています。

現在、ポスト京都議定書をめぐり、2050年の温暖化ガス削減の目標値設定に向けて各国が調整を行っています。まだ、決まってはいませんが、先進国の削減目標は80%となることが予想されています。この目標を達成するためには、どのような社会構造の変化が必要となるでしょうか。生活のスタイルを変えるだけでは、到底80%の削減はできません。そこで、環境技術による各産業分野での排出削減が求められるようになります。この目標を達成するためには、この20~30年の間に多大な技術投資が行われなければなりません。しかも、鉄鋼など二酸化炭素の排出の多い産業では、本業が低迷する中での設備投資となります。このため、単に、省エネなどを行うだけでなく、新たな環境事業を行うことで、二酸化炭素削減と事業拡大を両立する必要が生じます。

しかし、環境技術は一般に技術が高度であるにもかかわらず、開発時間が十分に確保できないという問題があります。一例として、ガス化溶融炉という技術があります。ごみをガス化した後に高温燃焼し、残った灰を1200℃以上の高温で溶かすとともに、バイオマス由来の発電を行う技術です。本技術は、ダイオキシンの排出削減という時代のニーズに応えるため、技術の完成度が十分確認できていない段階で市場に投入されました。その結果、実稼動させながら、メーカーが多大な技術投資を行って完成させたという経緯があります。木質バイオマス発電プラント、バイオエタノールプラントなども同じ傾向にある技術です。従来の保守的な考えであれば、このような技術は市場投入が難しいということになり、環境技術は発展することができなくなります。このため、こうした技術リスクをコントロールして環境分野の新事業を立ち上げるためには、技術リスクに積極的に対応するリスクマネジメント手法が必要となります。

今後の低炭素社会を実現するためには、リスクをただ避けるだけでなく、リスクを見極め、戦略構築するリスクマネジメントを行うことが必要です。技術リスクを抽出・分析して事業への直接の影響を明確化した上で、どのようなビジネスモデルにすれば事業が実施可能なのかを検討しなければなりません。この点に気づき、積極的なリスクマネジメントを行った企業がこの事業分野で勝ち残ることになるのではないでしょうか。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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