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コラム「研究員のココロ」

メンズ消費をどう拡大するのか

2007年10月29日 野田 京治


 丁度2年前に、本コラムに「個人消費の新たな担い手 男性マーケットに注目」を掲載しました。(2005.09.16)
 その中で、「男もすなる日記というものを、女もしてみむとてするなり」の書き出しで始まる紀貫之の土佐日記に倣って、これからは、「女がすることを男もしたがる」として、化粧品、エステ、料理・グルメの分野での男性顧客の消費需要が拡大するとの見解を述べています。
 その根拠は、団塊世代および準団塊世代の男性層(昭和20年代生まれの男性
凡そ720万人)と晩婚・非婚男性層(30~44歳未婚男性450万人 10年前に比べて130万人、4割増)の自由裁量消費の増大が見込まれることと、男性の女性化、男女の消費・購買行動の同質化が進んでいることを挙げました。
 周知の通り、スポーツの世界ではかつて男性の専用領域であった柔道、レスリングをはじめとして、ゴルフ、ホッケー、サッカー、ボクシング、野球、ラグビーに至るまで、程度の差こそあれ短期間に女性スポーツとしても普及・定着化しつつあります。
 今や、柔道、ゴルフでは女性スポーツとしての人気が高いほどで、スポーツ全般にほとんど男女の垣根はなくなりました。

 逆に、永らく女性マーケットとして先行していた化粧品、エステの領域にも男性消費者の進出が本格化してきました。
 そのことを裏付けているのが、9月5日に改装リニューアルされた伊勢丹新宿本店のメンズ館です。
 同館の改装の目玉は、8階にある業界初の男性専用の「デイスパ」や、「生花店」、「カフェ」、「ヘアケア・スキンケアショップ」、「お香専門店」の売場だといわれています。
 デイスパに通い、カフェでお茶して、自分の部屋をお香や花で飾りながらお肌や髪のお手入れをする男性・・・・・まさに「女がすなることを男もすなる」という生活シーンそのものです。

 伊勢丹メンズ館に限らず、今年に入って新規開設あるいはリニューアル・オープンした商業空間やショッピング・プラザには、明らかにメンズ顧客層を意識したものが確実に増えてきています。
 東京ミッドタウンのガレア(グランドオープン3/30)に出店されているメンズファッション、小物、フレグレンス、シガーの専門店群や、新丸ビル(同4/27)の男性化粧品・雑貨(QUOMIST),メンズアクセサリー・ジュエリー(LUGO)、イタリアンメンズシューズ(クインクラシコ)、ビスポークテーラー(バタクハウス)などはその典型です。
 それらは、メンズに特化した幅広い品揃えと、従来以上にメンズの専門性や嗜好を鮮明に主張したものとなっています。
 ただし、これらは今のところ東京都心に限定的で、全国展開には至っていませんし、このまま勢いだけでメンズ市場が大きく拡大するとは思えません。

 これまで、消費の主役は常に女性でした。小売、サービスいずれにおいても女性層をターゲットにしたマーケティングをしっかり組み立てることが、消費拡大の成否の鍵を握っていました。
 「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」の譬えの通り、男性客を獲得するには先ず女性の集客に注力することや、女性のオピニオンリーダーの信認を得ることが先決だという考え方が支配的でした。
 それだけ相対的に男性向けマーケティングは未熟だったといえるでしょう。
 メンズ市場の拡大や活性化のためには、男性に関する消費者心理、ブランド・ロイヤリティ、購買意思決定行動などの研究・分析が今まで以上に重要になっています。
 男性の女性化が進んできたとはいえ、おのずと男女間には価値観や購買行動についての差異があります。
 男性消費者の一般的特質(あくまでも女性と対比しての観点から)を整理しますと以下の5点です。

1.プロへの憧れが強い
 その道を極めた人や専門家といわれる人たち、即ち達人への憧憬が強く、自らも他人からプロだ、専門家だと呼ばれたいという意識を持っている人が多いといえます。
 ですから、「プロ仕様」、「専門家向け」というキャッチコピーに反応し易いところがあります。

2.薀蓄を傾けたがる
 モノを介在して、そのモノの持っている機能に加えて情報・知識を得ることと、またそれを他人に披瀝することに喜び感じる人たちが少なくありません。
 由来、いわれ、故事来歴に対する興味も高く、商品に添付された説明書の中身についても熱心に読む人も多く、女性に比べ画像情報より文字情報に反応・関心が高いといえます。

3.女性の応対・評価・意見に耳を傾けそれを受容しやすい
 男性は女性に相対すると、総じて警戒心が薄れ説得されやすく満足度が高くなりがちです(逆は真ならず)。
 男性客に応対する場合、セールスであれプレゼンテーションであれカウンセリングであれ施術サービスであれ、女性スタッフが担当する方が効果的なケースが多いものです。

4.オリジナリティを求める
 他人と同じものを持つより違うものを持ってみたいという意識は女性より男性の方が強い傾向にあります。
 「限定品」、「オリジナル仕様」への反応が大きいのも男性の特質です。

5.プロセスを楽しむ
 完成品やメーカー既製品そのものを得るだけで満足せず、その製品を解体して、造り直し(改造・改築)したり、修理・修復することにより大きな楽しみを感じるのは、圧倒的に男性に多いようです。
 キット(組立材料セット)製品の購入率で男女差があるのもその所為です。

 これまで女性に比べて採り上げられる機会に恵まれなかった男性消費市場は、未知・未開拓の暗黒大陸です。きめ細かく分析研究する価値は十分にあると思いますが、如何でしょうか。
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