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Sohatsu Eyes

インフラ投資による需要創出

2009年04月07日 副島 功寛



百年に一度といわれる経済危機の発生を受け、大規模な財政出動による需要創出の必要性が指摘されるところですが、安易な前例踏襲により負の遺産が膨らむリスクにも目を向けると、今は、世に創出されるべき需要の質を厳しく問わねばならない時期といえます。

昨今の各国の政策に目を向ければ、需要創出の手段として劣化したインフラへの投資があることは指摘するまでもありませんが、その投資においては、少なくとも二つの条件が求められます。一つは、当該投資が、将来の財政負担の縮減に寄与することです。わが国の債務残高の大きさはこれまで重要な政策課題と認識されてきましたが、目先の経済対策の必要性が増すにつれ、その深刻さが矮小化されつつあります。この点については、小渕政権以降、わが国が辿ってきた歴史を振り返らねばなりません。もう一つは、災害に対する耐性の強化です。米国では、ハリケーンカトリーナがニューオリンズ市を襲ったとき、異常事態のなか、多くの犯罪が引き起こされました。こうした事態がわが国で生じることを避けねばなりません。

ここで指摘されるべきは、既存のインフラを前提とした更新投資や維持管理では、ここにあげた二つの条件を同時に満たすことができない点です。各地方公営企業が行う事業では、更新投資やそれに伴う耐震化が計画として挙がっていますが、それは現状のネットワークを前提としており、将来の財政負担の縮減を示唆するものではありません。団体の特性にもよりますが、人口減少下では、既存のネットワークに固執することなく、インフラを捉えるしなやかさが必要でしょう。

その一例として、コンパクトシティのような概念があります。その実現にあたっては、居住の自由にかかる議論等が必要ですが、住民が一定の行政区域に属し、そのサービスを享受する以上は、集団の存続のために自らの利益と集団の利益を調整する意思を持つことが期待されます。もちろん、その前提としては、今後の地域に対する具体的なビジョンや、ユニバーサルサービスのあり方を本質的に捉えなおす取り組みが必要になります。

大規模な財政出動の対象として、インフラ投資が掲げられる今、その政策についてのより深い議論を喚起するタイミングもまた、今であることを改めて実感しています。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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