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コラム「研究員のココロ」

組織内コミュニケーションの取り方

2007年10月22日 久保田 智之


1.「集団」の力から「個人」のレベルアップ

 成果主義人事制度の浸透、ITの発展により、より個人的な成果を重視する傾向が90年代の後半から続き、終身雇用、年功序列が批判にさらされるようになってきた。もともと、日本企業の特徴は、(1)終身雇用、(2)年功序列、(3)企業別労働組合であったと言われている。しかし、集団の中に安住してはいけない、「強い個人」が必要である、などとされ、そのため給与制度では年齢給の世界から一足飛びに年俸制が議論されるようになってきた。「寄らば大樹」といった働き方が認められなくなってきたのである。3つの特徴に代表される日本企業の強みのひとつは、社員が安定した組織に長くいることで、様々なノウハウが蓄積され、それを長い年月をかけて伝承していくことにあった。また、一つの組織に比較的長くいることで、コミュニケーションにかかるコストが少なく済んでいた。つまり、共通の文化を背景に持つことで言葉の一つひとつ?をとっても、よくわかりあえる部分が多く存在した。そのことが、また社員の満足感(そこまでいかなくとも安定感)を生んでいたと考えられる。ところが、日本企業に改革・革新の必要性が生じてくると、集団に適合する人材から「強い個人」が求められるようになった。「強い個人」を期待人材像におくことで日本企業は新たな境地を切り開いていったのだが、最近では同じ組織に属しながら、わかりあえない関係というものが目立つようになった。

2.組織の問題とは、すなわちコミュニケーション不全である

 「強い個人」が求められた結果として組織内のコミュニケーションが寸断され、組織力・総合力の弱体化が顕著になってきた。一方、「強い個人」は、わがままである、勝手である、教育がなっていない、などいろいろな批判にさらされた。そこで最近改めて行われていることが、「報連相」を強化しようという動きである。もともとコミュニケーション不全の問題とは、組織内の意思疎通をうまくしなければならない、との極めて日本的な企業組織の事情から発生してきたと考えられる。組織内コミュニケーションを円滑にするとは、タテ(報告)・ヨコ(連絡)・まわりへの伝達(相談)をうまくすることと理解されてきた。確かにベースとして「報連相」を徹底することは大事なことであるが、問題はうまく解決できていない。考えてみれば、「報連相」とは情報の出し手の問題であって受け手は問題にされていない。そこで最近では、情報の受け手である管理者側にも問題があるのではないかと、コーチングをはじめとする傾聴のテクニックが重視されるようになった。コーチングとは、個人の持つ力を引き出す手法で、支援・質問をベースにしたコミュニケーションスキルである。その中でも傾聴(相手の話を感情の部分まで理解する)はコミュニケーションのために必要とされている。

3.人と人とのつながり(ネットワーク)が組織を保つ

 このところ、復古主義的といわれながらも運動会や社歌の唱和、社内SNSなどを行う会社が増えてきている。会社組織が昔ながらのタテ(上司-部下)とヨコ(同僚)だけで形成されているわけではなくなっている状況が背景にあると考えられる。世代、性別、役職を超えた、ランダムなつながり、まさしくネットワークの形成こそが、現在の組織における最重要課題となっているものと思われる。このようにして見てくると組織におけるコミュニケーション問題は、タテ(上司-部下)的な発想によるアプローチだけでは足りないようである。組織内メンバーが確かに組織に属していて、他の人と繋がっているという感覚を持つことによってコミュニケーションギャップを減らし、組織をうまく保つことができる。コミュニケーションの欠如は、人と人とのつながりが希薄になったことが大きな原因である。つながり合っているということこそが人を支え合うのである。そのためには、自己開示と相互の価値観の交流を通じた打ち解けた関係作りが必要となるのであろう。
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