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Sohatsu Eyes

中国・環境ビジネスの変化

2009年02月03日 荒生元


最近、中国の環境ビジネスに対する企業のスタンスが徐々に変わってきているように感じます。これまでは、技術流出の懸念がある、独特の商慣習に馴染めない、目先の費用対効果が重視され必ずしも日本の技術が評価されない、といった消極的な声が多く聞かれましたが、最近では、積極的に捉えている企業が増えつつあります。特に、注目しているのは、高度な技術、新領域での事業を志向している企業が多いことです。昨年11月に開催された「第3回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」での日中企業間の合意事項のなかにも、ITを使ったビルの省エネルギー、分離膜やオゾン技術を使った水処理といった先端的な技術や、自然環境の再生などの新領域での事業に関する協力が含まれています。

背景には、2つの要因があると考えています。1つ目は、金融危機の影響です。これまで世界経済を牽引してきた北米市場は急減速し、好調を続けてきた欧州市場や資源国市場も少なからず影響を受けています。金融危機の影響を受けつつも高成長を維持し、中長期的にも成長が見込まれる新興国市場は日本企業にとって重要な市場です。なかでも、世界の一大市場に成長した中国市場は無視できない存在になってきています。

2つ目は、中国の環境規制の強化です。今年1月1日に施行された「循環経済促進法」では、水、エネルギー、鉱物資源、廃棄物、有害物質など幅広い分野を対象としていることに加え、目標責任制(環境目標の達成を首長などの責任とする制度)や生産者責任など新たな制度の導入にも言及しています。目標責任制の導入は不徹底との指摘が多かった規制運用を厳格にし、新たな技術の普及を後押しすると考えられます。また、生産者責任の導入により、家電、自動車などの新たなリサイクルビジネスが本格化すると期待されます。

中国政府は、2010年を目処に環境法体系の整備を進める方針であり、環境規制の強化は今後も継続的に行われる見込みです。規制強化によって生まれる新たな市場は、技術に優位性のある日本企業にとって有望な市場と捉えられます。中国の環境問題の解決、日本の環境産業の持続的発展のためにも、日本企業の参入が益々活発になることが期待されます。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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