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Sohatsu Eyes

金融危機とCSR

2009年01月06日 足達英一郎


グリーンスパン氏をして、「百年に一度の未曾有の事態」と言わしめた今回の金融危機。公的資金が注入され、リストラの嵐が吹き荒れる欧米系の資産運用会社では、SRI(社会的責任投資)のアナリストチームが次々と解散の憂き目にあっている。

では、今回のリセッションはCSR(企業の社会的責任)への世界的な関心をどこかに吹き飛ばしてしまうのであろうか。話しはそんなに簡単ではないようだ。

10月30日、2008年の全欧CSR会議に出席した。今回はEUの議長国がフランスであることから、パリが開催地となり、欧州委員会のほか欧州経済社会評議会、フランス経済・社会・環境評議会の共催となった。会場はPassyの近くのPalais d’Iéna。冒頭、開会にあたってフランスのグザヴィエ・ベルトラン労働・社会連帯・家族大臣は、「この数週間に、私たちが目にしていることは短期志向の金銭的利益だけを追い求める行動が結局、何も残さなかったという事実である。欧州連合の議長国であるフランスとしては、CSRというトピックスをいま一度、きちんと根付かせたいと考える。CSRは欧州の社会モデルの本質的要素である。当初から欧州の建設にあたっては、経済的発展と社会的発展の間のバランスに配慮がなされてきた。CSRはまさにこのバランスの問題を問うている。私は、CSRが欧州の発展の源泉だと考える。欧州がCSRの優れた極になるという野心的な政策を欧州連合が継続して採択していくべきであると考えている」と述べた。

金融危機の対策に奔走するだけでなく、金融危機の原因を考えて、それを教訓にするという姿勢には感心した。そして「リセッションだからこそCSR(企業の社会的責任)だ」という主張が出てくるところに、欧州の懐の深さを感じた。折しも暮れには、社会的責任の国際規格ISO26000のコミティ原案も公開されている。世界には、まだ理性が僅かでも残されていると信じたい。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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