Sohatsu Eyes
金融危機下の中国環境・エネルギー市場の現状
2008年12月02日 王 婷
米国サブプライムローン問題に端を発した世界的同時不況を背景に、経済が低迷しています。IMFの予測によると、2008年、2009年の先進諸国のGDPが軒並みにマイナス成長になるとのことです。中国は、2008年に9.7%、2009年に8.5%と高い成長率が見込まれているものの、株式市場が大幅に落ち込み、欧米向けの素材系製造工場などが相次ぎ閉鎖するなど、世界同時不況の影響が及んでいます。
かかる状況の下で、第11次5か年規画の重点分野である中国の環境・エネルギー市場は、今後どのようになるのでしょうか。
楽観論と悲観論の両方があるように思われます。悲観論からいうと、企業経営が厳しいなか、企業は環境改善に投資する余力がなくなることや、また、近年好調な環境・エネルギー関連企業への各種の投資ファンドが、投資の見直しを迫られることから、環境・エネルギー市場そのものがかなり冷え込むようになると見られます。一方、楽観論からいえば、経済低迷の中、中国政府がこれまで以上に産業構造の調整や、内需の刺激に取り組むことで、環境保護分野が新しい経済の成長点となるのではと前向きに捕らえることができます。ちなみに中国政府の国務院常務会は11月9日、2010年末までに4兆元の投資を、10分野を中心に行うと発表しましたが、そのうち、環境保護と生態建設がひとつの重点分野になっています。また、11月12日に開かれた環境発展国際合作委員会では、今後3年間1兆元を調達し、環境保護分野に投資すると強調し、省エネ・節水、汚染対策、再生可能エネルギーを重点投資分野におくと明言しました。さらに、11月14日には国家発展改革委員会は、今年度第4四半期の政府の1000億元の投資のうち、120億元が環境分野に、50億元が汚水処理施設と管路、廃棄物処理の施設の建設に、10億元が省エネ・重点流域の水質対策に振り向けられるとなっています。
日本は、1973年の石油ショック以後、政府と企業が力を合わせて省エネ、新エネ、環境保護の技術開発などに積極的に取り組むことで、経済成長を実現するとともに、世界で最も優れた環境・エネルギー先進国になりました。中国も今回の経済危機をきっかけに、環境・エネルギー分野の技術開発などに積極的に取り組み、新しい成長点を創出することを期待したいと思います。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。