Sohatsu Eyes
環境ビジネスは有望か
2008年10月21日 市川 元幸
温暖化への取組が世界的に急がれるなかで、「環境技術」が新たな成長戦略を描くキーワードになっている。では、環境を軸とする日本企業の行く末は有望なのであろうか。この問いに対する筆者の予想は、Yesながらも高い条件つきである。
確かに、「日本の鉄鋼業のエネルギー効率は他の主要国を15~20%凌駕」「水不足の深刻化で省エネ型の日本の逆浸透膜技術に期待」といった報道をみていると、日本企業の技術力が先行している部分は少なくないのであろう。一方で、いま話題になっている太陽電池の分野では、世界市場での日本企業の存在感は、トップ10入りの企業数とシェアでみる限り、2002年の「4社、48%」から、5年を経た2007年には「3社、25%」へと後退している。日本企業が、内外の競合企業と伍して、将来の投資をまかなうだけの収益を上げられるかどうかは楽観できないといえよう。
上述の太陽電池に関し、少し細かくみると、単にアジア勢が力をつけたにとどまらず、競争の中身が変化していることに気づく。昨今、製造ラインを丸ごと調達するターンキーシステムの導入で新たに参入する企業が相次いでいるのである。製品が、特注部品と組立ノウハウの複雑な塊から、汎用品の単なる寄せ集めになると、先行企業の技術蓄積という強みが陳腐化してしまう。このことは、パソコンの世界でもみられた現象である。日本企業が強い自動車の分野でも、電動化で製品のプラモデル化が進むという指摘がある。
このような状況下、各企業は置かれた状況、ビジョン、体力に応じて、競争力の確保が求められる。匠的技術の一層の強化、利用段階での新たな事業モデルの提供、国内の高付加価値市場への特化など、各企業の対応は分かれてこよう。政策の観点からは、新規事業者を含む様々なタイプの企業が競争できる環境を整えることが、最終的に、利用者の便益の高まりと経済成長につながることになろう。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。