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コラム「研究員のココロ」

経営トップよ“ビジョンを全社に浸透させよ!”<後編>
~『ヨコ(部門間)のビジョン浸透力』を強化し、中期経営計画のPDCAを徹底する~

2008年03月10日 中川 隆哉


【はじめに】

 筆者の属する経営革新クラスターでは、中期経営計画(中計)のPDCAを回すプロセスを通じた企業全体の総合的な実力として『経営戦略力』というコンセプトを提唱している。

『経営戦略力』 = 策定力(P) × 実行力(D) × 評価力(C) × 修正力(A)


 『経営戦略力』はPDCAプロセス全体の足し算ではなく掛け算であるため、全てのプロセスを徹底しなければ、中計で掲げた目標は達成されることなく“絵に描いた餅”と化してしまう。逆に中計のPDCAを徹底するという“当たり前のことを当たり前にできれば当たり前の企業ではなくなる”と主張している。
 筆者は、中計のPDCAがうまく回らない根本的な原因が、“経営トップの示すビジョンが全社に浸透していない”ことにあると認識しており、前回は「タテの浸透力」を強化する方法について述べた。

【『ヨコのビジョン浸透力』を考える】

 ビジョンを全社に浸透させる力を『ビジョン浸透力』と定義すると、

『ビジョン浸透力』 = 「タテ(階層間)の浸透力」 × 「ヨコ(部門間)の浸透力」


と分解することができる。

図

 「タテの浸透力」に関しては、各階層間に“ハザマ”が存在し、うまくビジョンが階層間の“ハザマ”を乗り越えられないケースが多い。そして、それを脱却する方法として、
  1. 「なぜこのビジョンなのか」を説明すること

  2. ビジョンを共有化する時間を十分に確保すること

により、「タテの浸透力」を強化できると述べた。

 では、「ヨコの浸透力」についてはどうなのであろうか。全社ビジョンが階層間の“ハザマ”を克服し、適切に部門ビジョンに展開されたとしても、そもそも自部門のみで完結できる項目はそれほど多くない。したがって、それぞれの部門ビジョンを遂行するためには、いかに「ヨコの浸透力」強化を図るかが大切なのである。そして、タテ(階層間)と同様、ヨコ(部門間)にも“ハザマ”が存在し、うまくビジョンが部門間の“ハザマ”を乗り越えることができないケースが多い。

【『ヨコのビジョン浸透力』を強化する】

 部門間における“ハザマ”を克服し、「ヨコの浸透力」を強化する方法については、筆者は以下のように認識している。
  1. 部門ビジョン達成のために必要な他部門への依頼事項を抽出すること

  2. 抽出項目に対して連携・調整を図ること

 まずは、部門ビジョンを達成するために、他部門へ依頼すべき事項を各部門に提出させる。続いて、依頼した部門とされた部門の部門長同士で、「なぜその依頼が必要なのか」、「具体的に何をすればいいのか」、「対応可であればどのようなスケジュールで対応するのか、否であればどのような代替案があるのか」等について協議させる。
 ただし、連携・調整が容易な項目については部門長同士のみで解決できるが、例えば、利害が対立する項目、依頼事項に対応するために費用が発生する項目等については、なかなか当事者のみでは協議が進まないことが多い。このような場合には、経営トップも同席のうえ、「全体最適」を主眼として判断を下すこととしている。同時に、依頼事項の進捗管理については、依頼した側に責任を持って管理させ、部門長同士の集団無責任体制になることを回避している。
 こうしたプロセスにより、全社ビジョンから適切に展開された部門ビジョンに対し、部門間の横串を通すことができ、中計のPDCAをまわすために最重要な“全社的なビジョンの浸透”が可能となるのである。
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