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Sohatsu Eyes

定着するか「エコポイント制度」

2008年06月10日 佐藤浩介



洞爺湖サミット開催を控え、環境省は新たに「エコポイント制度」を開始し、モデル事業として全国型4件、地域型9件を選定しました。このエコポイント制度とは、換金性のあるポイントという経済的利益を与えることにより、消費者のCO2削減に資する商品・サービス行動を促進していくものです。この施策の背景には、近年のCO2排出の増加が著しい家計部門、すなわち消費者一人一人の意識・行動を根底から改革する狙いがあります。事実、わが国の低炭素社会への移行を唱え、昨年6月に出された「21世紀環境立国戦略」の中でも、エコポイントの取組の必要性が明記されています。

このエコポイントには、消費者の意識・行動改革に留まらず、2つの副次的な効果があると考えられます。その1つは、企業に対するCO2を削減した製品・サービスづくりに向かうインセンティブです。CO2削減への取組は企業にとってコスト増加(価格上昇)要因ですが、消費者の理解を得られるのであれば取組むメリットが出てきます。そしてもう一つの効果は、これが画期的なのですが、地域経済活性効果です。地産地消などの消費者の行動変革とともに地域型エコポイントが地域通貨にリンケージされれば、地域循環型の新しいお金の流れ、ファイナンスが創出される可能性が高まるのです。

しかし、このエコポイントにも解決すべき課題が多々あります。まずは換金などの利便性の向上です。2005年に開催された愛・地球博で試験導入されたエコポイントでは、換金の不便さが大きな問題となりました。また、ポイント原資を誰が負担するかというのも問題です。CO2削減のためコストをかけている企業に負担させるのには限界があります。さらに、フリーライド企業が発生するのを防止するためにも、CO2削減量を精緻に測定する仕組みづくりも不可欠です。この制度が洞爺湖サミットでの一時的な取組にとどまらず、わが国で本当に根付くのか、官民の協働の創意により実効ある制度構築が求められています。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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