Sohatsu Eyes
「偽」と「企業」と「消費者」と。
2008年03月04日 森田 美智子
昨年を表す漢字が「偽」だったことは、記憶に新しいですね。食品の消費期限の改ざん、建材の耐火性能偽装など…。
今年に入ってからも再生紙の古紙比率の改ざんに始まり、大豆油インク偽装など、「偽」の文字で表されるような企業不祥事が引き続き起こっています。また、食品についても原材料の偽装や、「食の安全」にかかわるような事故・事件も起こっています。
これらの出来事は、消費者にとっては非常にショッキングな出来事でした。もちろん、私自身一消費者として裏切られたような思いを持ちました。ただ、これは一概に企業だけの責任とは言えないのではないでしょうか。
消費者である私たちは、企業が提供する製品やその表示に何の疑いも持たず、信頼して購入してきました。日常消費しているものについてはなるべく「質がよくて安いもの」を選ぼうとしながら、忙しい中で買い物に割ける時間は短く、商品を選ぶときにはぱっと見えた表示をもとに買い物をするでしょう。
その結果、自分たちの「感覚」を忘れ、「表示」に頼って消費してこなかったでしょうか。
もちろん企業には、製品の品質を高め、正しい表示をすることがこれまで以上に“企業の社会的責任”として求められていくでしょう。再生紙の古紙比率は見て触っただけで判断できるようなものではなく、加工食品も表示される原材料や消費期限がなければ選べません。
それでも、消費者である私たちは自分の五感で、商品を選ぶことも大切ではないでしょうか。その商品の見た目、色、手触り、におい、そして味。自分の五感をフルに活用することができれば、ある程度はその品物の品質についてチェックすることができます。商品に今ほど多くの表示がされていなかった昔であれば、きっと当たり前にやっていたことのはずです。
購入時にはパッケージに入っていて判断できないことも多いかもしれないけれど、例えば購入後に、品質がおかしいと思ったときには、ステークホルダー(利害関係者)としてその声を率直に企業に伝えていく。そのことで製品・商品に対する企業の姿勢を変えていくことはできるのではないでしょうか。
企業の社会的責任に対するコミットメントは、我々消費者が育てていくものと言えるのかもしれません。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。