Sohatsu Eyes
世界トップクラス研究拠点
2007年09月26日 金子 直哉
年初に米国を訪問し、世界トップクラスとして認知されている複数の研究拠点において、リーダーとの会合を持つ機会がありました。会合目的は、「トップクラスの研究拠点が持つ特徴を明らかにし、日本でのトップ拠点形成に活かす」ことです。
ライフサイエンス、環境・エネルギー、情報通信、ナノテク・材料、基礎科学の5分野を対象に、9つのトップ拠点をベンチマークした結果、全ての機関に共通する「トップ拠点の要件」が見つかりました。結論は、トップ拠点としての最も重要な要件は、「トップクラスの人材を集める力」を持っていること。そして、この力は「研究拠点の“ビジョン”と“人材”」から生まれてくるというものです。
「カーネギーメロン大学のロボット研究所」のケースでは、1979年に掲げた「人工知能に関する“大学の研究レベルの高さ”を活かし、ピッツバーグ市に“ロボット分野のトップ拠点”を創る」というビジョンが、誕生のきっかけとなりました。
このビジョンを作り出した「ビジョナリー・リーダー」が、アラン・ニューウェルとハーバート・サイモンという二人の教授であり、これに共鳴しビジョン実現の役割を担った「研究リーダー」が、ラズ・レディー教授になります。
こうして“独自のビジョン”と“3人のリーダー”を得たカーネギーメロン大学は、ロボット分野において「研究資金の獲得」と「トップ人材のスカウト」を精力的に展開していきます。やがて、十分な研究環境が整い、トップクラスの研究者が揃うようになると、その後は、これらの人材を慕って他の優れた研究者が集まる「人が人を引き付ける好循環」がもたらされました。これが、今日のロボット研究所の世界トップとしての活躍につながっています。
トップクラス研究拠点が「世界のトップ人材が、そこでしか得られない“ビジョン”と“人材”を求め、集まってくる場」であるとすると、私達が真っ先に取り組むべき課題は、「日本が世界に誇る研究ビジョン」と「ビジョンを支えるリーダー像」の具現化にあると言えます。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。