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コラム「研究員のココロ」

2007年問題の処方箋(Ⅰ)
~若手に技能や知識を伝承するのかしないのか~

2007年04月02日 吉田賢哉


(1)はじめに

 2007年を迎え、団塊世代の大量退職がついに始まる。熟練技能者が製造現場を支えている企業や、ベテランが長年の経験によって培った異常を察知する勘が重要な企業などにとっては、団塊世代が自社から離れていくことは自社の競争力の低下に直結する大きな問題である。
 団塊世代が戦力として必要な企業の多くは、団塊世代の雇用を65歳まで延長することで、貴重な労働力を確保しようとしている。そのため、2007年問題は5年先延ばしされ、「2012年問題」化したようにも見受けられる。
 しかし、雇用延長はあくまで5年間の猶予を得る手段に過ぎず、多くの企業において根本的な問題解決は図られてはいない。2007年には大量退職が発生するとことは以前からわかっていたことであるにもかかわらず、大半の企業は十分な対策を採らないままに今日を迎え、一時しのぎの対策を行っている。2007年における雇用延長のように、2012年にも何か良い一時しのぎ策があると考えるのはあまりに楽観的だろう。
 企業は残された5年間を利用して、2012年問題化した、2007年問題の根本解決に取り組まねばならない。この5年間の取り組みによって、それ以降において企業が持続的に発展することができるか否かが決まることであろう。この5年間が団塊世代の大量退職の対策を立てる本当に最後のチャンスである。

(2)自社の若手に技能や知識を伝承していく必要があるのか?

 2007年問題では、自社に内在する暗黙的なノウハウを、ベテランから若手にいかに伝えていくかに注目が集まりがちである。
 だが、自社の競争力強化や、企業としての存続・生き残りといった観点で考えれば、必ずしも技能や知識の伝承ありきで考えなくとも良いはずである。
 技能や知識を若手に伝えずとも、同等のものを自社が使える環境を整えることができれば、自社のビジネスを優位に保つことができるはずである。
 それゆえ、「人的資源の確保・強化」を行って、若手に技能や知識を伝承していくことが考えられる一方で、IT化の推進や設備投資の積極化を通じて、若手に技能や知識を伝承した場合と同等の競争優位性を確保することができれば、2007年問題を解決することができるだろう。
 また、人的資源の確保・強化を自社内のみで行わなくとも、外部企業を活用して、若手に技能や知識を伝承した場合と同等の競争力を確保する方法も考えられる。自社の独特の技能やノウハウを重視する「内製志向」にこだわらずとも、2007年問題に対処することは可能であろう。
 以上を踏まえると、2007年問題への対策は、大きく4つの観点で論じることができる。

【図表】2007年問題対策の4つの観点



(3)2007年問題の解決策は1つではない

 自社の若手に技能や知識を伝承することだけが2007年問題の課題ではない。自社の競争力を確保し、自社の持続的な発展や生き残りを実現するためには、2007年問題を広く、多角的に捉え、その対策を考えることが有効であろう。本稿で紹介した4つの観点は広く多角的に問題を捉える助けになるであろう。
 そして、4つの観点のどれか1つを採用して2007年問題に対処するべきというわけではない。今後の経営戦略を考え、自社の各部門を見回すと、4つの観点の中で適するもの、適さないものがあることだろう。自社の分析を行って、どの部門にはどの観点を当てはめるべきかを考えることが重要である。
4つの観点を組み合わせ、複合的に2007年問題に対処することが望まれる。
 次回以降、4つの観点を掘り下げ、2007年問題への対策をさらに考えていく。
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