Sohatsu Eyes
メタン発酵施設と焼却施設のコンバインド型による循環型社会の形成
2007年07月24日 田中義朗
地方自治体が実施する一般廃棄物処理事業では、公共サービスの質の向上と財政負担の軽減を目的とした官民連携が推進され、PFIやPFIに準ずる事業方式が広く普及してきました。そのような中、今日の廃棄物処理事業の最前線では、循環型社会形成に向けた新しいタイプの事業が実現しようとしています。
山口県防府市は、市内で排出される可燃ごみ、不燃ごみ、粗大ごみ、資源ごみを処理する施設をPFI方式(もしくはPFIに準ずる方式)によって一体的に整備・運営する「防府市クリーンセンター整備運営事業」の実施に向けた準備を進めています。本事業は、高度なエネルギー回収による循環型社会の形成を推進するため、メタン発酵施設と焼却施設のコンバインド型による先進的な事業スキームの構築を目指しています。
本事業では、可燃ごみを、厨芥類、紙類、草木類のバイオマスとプラスチック等に機械選別します。バイオマスはメタン発酵によりメタンガスを生成して有効利用するとともに、プラスチック等の高カロリーのごみを焼却して発電、熱回収することを計画しています。
本スキームには、3つのメリットがあります。
1点目は、エネルギー効率の向上です。水分の多い厨芥類等バイオマスのエネルギー効率を高められるとともに、厨芥類が除かれて水分が少なくなったプラスチック等を焼却することで、焼却施設での発電効率も高められると考えます。
2点目は、環境性の向上です。CO2等温室効果ガスの排出削減、ダイオキシン類等有害物質の排出抑制が期待されます。
3点目は、有効利用の拡大です。エネルギー利用が現地、現時点に限定される発電、余熱利用と比較して、貯留、輸送が可能なメタンガスの利用は、面的、時間的、手法的にエネルギー利用範囲の拡大が期待されます。
しかし、新技術である本スキームには、課題も存在します。可燃ごみからバイオマスとそれ以外のごみを選別する技術や、バイオマスをメタン発酵する技術が必ずしも最適化しているとはいえない状況において、一般廃棄物処理事業に求められる安定性と信頼性を確保することです。一般廃棄物処理事業では、収集したごみを確実に全量処理することが最も重要なことだからです。
先例の踏襲ではなく、新たな事業スキームを構築するためには、様々な困難や課題に直面しますが、熱い議論・緻密な検討によって一つ一つ問題を解決していくことで、廃棄物処理事業は新たなステージを迎えることができると考えます。
本事業において、エネルギー効率の向上、CO2排出削減といった具体的な効果を実現し、循環型社会形成に向けた新たなモデルが構築できるよう、精力的に挑戦していきます。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。