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新エネ・省エネ政策に一貫したコンセプトを

2007年07月10日 槌屋 詩野



日本の省エネ・新エネ業界に、先が見えない閉塞感が続いています。ひとえにエネルギー計画の首尾一貫したコンセプトが欠けたまま、京都議定書の第一約束期間である2008年を迎えなければならないという事態が産業界にも影響を及ぼしているから、と言えます。日本政府の対応も50年後のエネルギー削減に対する展望はあっても、具体的なマイルストーンがありません。また、約束達成のために打ち出された方針では原子力の積極的利用が謳われていますが、原子力利用の底上げ政策では省エネ・新エネ産業に対する新規投資や技術開発の資金投資には繋がらず、直接的な産業界の活性化は見込めません。
一方で、CO2排出制限をかけられた欧州各国はそれぞれの強みを生かした省エネ・新エネ政策の方針を打ち出し、産業界もそれに応じた集中と選択を続けています。また、アメリカや中国など京都議定書の枠組み外の大国でも、方向性を明確にして取り組む姿勢が本格化しています。こうして各国が徐々にその土地に応じた特色を見せ始める中、日本のなかなか思い切った一歩を踏み出せない様子が浮き彫りになっているのです。

中でも興味深いのは、中国や東南アジア地域がバイオマスエネルギーに向ける熱い視線です。日本では2012年までにE3燃料(バイオエタノール3%混合燃料)の利用を拡大、2030年にはE10燃料(10%混合)利用を普及させる計画ですが、中国では2005年末までに4省(湖北省、河北省、山東省、江蘇省)27都市でE10燃料利用が開始、遼寧省や河南省では2004年からE10燃料の利用が義務付け、など政策レベルで産業を押し上げ、技術開発に資金が流れる仕組みが形成されています。食糧難リスクへの配慮もあり、食用植物からのバイオエタノール採取に対し規制を行い、バイオ燃料食物の肥沃化効果を利用し、非耕作地に植林を行うモデル事業を行っています。
タイやインドネシアでもバイオマスエネルギーは大きな存在感を持ち、特に今後はバイオディーゼルに対する注目度が高まっています。このように農業国家であった国々が自己の強みを生かした新エネ構想を立て、実現可能性が高い計画に沿って、世界で競争力を持つ技術が開発されつつあります。こうした政策上の明確な態度表明があってこそ、国内外からの資金流入や海外企業の進出による技術競争が進み、多様なアクターが参入する活性化された市場が形成されるのです。資金力に溢れ、新しい技術開発が進めば、新エネ利用の価格面での敷居もますます低くなっていきます。

確かに新エネ利用は、抜本的な生活環境の変化が必要で、市民や企業側の認識が欠かせず、単なる市場形成だけでは達成できませんが、こうした中国、東南アジア地域の省エネ・新エネビジネスへの目を見張る投資は、閉塞感がある日本の状況とは全く対照的です。資金の流れと生活環境の抜本的改革の仕組みがあってはじめて、次のステージがみえてくるのです。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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