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地球温暖化対策コストの見える化は時代の趨勢

2007年05月15日 富士 昌孝



来年2008年から、京都議定書の第1約束期間が始まります。日本は、2008年~2012年の5年間で、CO2などの温室効果ガスを1990年と比べて6%削減しなければなりません。しかし、2005年度時点の排出量は1990年と比べて8%増加しており、目標達成のためには温室効果ガスを14%も削減することが必要となっています。

日本は、1980年代に起こった石油ショックの経験から、京都議定書の数値目標の基準年の1990年より前に省エネルギーを進め、その結果、世界トップレベルのエネルギー効率になっています。これを日本の地球温暖化対策が進まない要因にあげる人たちもいます。確かにこれは正論ですが、地球温暖化は先進国の経済成長の過程で大量排出されたCO2によって起こった現象であり、地球温暖化の要因を作った先進国の日本は京都議定書の遵守に前向きに取り組んでいかなければなりません。

排出権取引所の設立は日本が採用していない地球温暖化対策の一つです。欧州では、企業が生産活動で排出するCO2に排出権という環境価値を付与し、排出権取引所で株式と同じように価格をつけてCO2を取引しています。つまり、地球温暖化対策のコストが具体的に数値化されているということです。これにより、欧州の企業は、排出権取引所のCO2の取引価格を見ながら、地球温暖化対策を行った場合のコスト(省エネルギー設備の投資コスト等)と地球温暖化対策を行わなかった場合のコスト(他企業からCO2の排出権を購入するコスト)を比較し、地球温暖化対策の投資判断の参考材料としています。現在、欧州では、自社で積極的に地球温暖化対策を行う企業が多く、省エネルギーや風力など再生可能エネルギーの積極的な導入が温室効果ガスの排出量を減少させる要因になっています。

また、途上国で温室効果ガスの排出削減プロジェクトを行うことで排出権が発生するCDM(Clean Development Mechanism)の市場では、世界市場のスケールで排出権の獲得競争が行われています。先進国の企業は排出権の価格が安いプロジェクトを捜し求めており、世界レベルで排出権が取引されています。

このように、既に世界では地球温暖化対策のコストの見える化が図られており、それが温室効果ガスの排出量削減に結びついていると言えます。
日本国内には、欧州のように、各企業に対する排出量の数値規制や排出権取引所はありませんが、時代の趨勢として、今後、このような制度が取り入れられる可能性は十分にあり、その結果CDMなど排出権取引の取り組みが積極的に行われることになると考えます。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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