Sohatsu Eyes
社会資本の大量更新時代
2007年03月13日 副島 功寛
最近、社会資本の劣化に伴う事故が日本の各地で発生しています。道路、上下水道、ガスなど我々の生活を支える社会インフラに一体何が起こっているのでしょうか。 国土交通省の試算によれば、近年の下水管の管きょの老朽化に伴う道路陥没箇所数が、2000年~2004年の間で約28800箇所に達しており、80年代前半くらべ約3倍となっています。また、建設後50年以上が経過する橋梁数は、2005年時点では国・地方合わせて約8800箇所程度ですが、これが20年後には66000箇所を超える推計となっており、日本の社会資本の劣化が深刻であることがうかがえます。
同様の現象は、1980年代のアメリカでも生じていました。国際建設技術協会資料によると、1930年代のニューディール政策により大量建設された道路構造物の高齢化が進み、1980年代には橋梁の約37%が建設後40年以上を経過している状況となりました。1983年には、建設後25年のマイアナス橋が、鋼桁の疲労が原因で崩壊し、本復旧まで3ヶ月を要したとされています。日本の橋梁の建設後経過年数を勘案すると、同様の事故が発生するリスクを完全に否定することはできません。
しかし、こうした事態への対応が求められている国と地方では、『改革と展望』に代表される行政改革の動きを受け、公共事業に関係する職員の減少と公共事業関係予算の減少が続いています。景気回復に伴い税収の増加が見込まれてはいるものの、地方財政の厳しい実態には変わりなく、国と地方の累積債務残高は高止まりしており、財政支出の縮減と効率化が一層求められています。高度成長期のように潤沢な資源を社会資本に向けることは難しいといえます。
こうした現状において、新規整備に比べると先延ばしされやすい維持管理・更新をいかに実施していくかは、大きな政策課題ですが、国土交通省では、新たに「長寿命化計画策定事業」を創設しました。予防修繕を積み重ねる方が、破損時に事後対応を行うよりもライフサイクルコストを縮減できるため、対症療法的な修繕及び架替えから、予防的な修繕及び長寿命化修繕計画に基づく架替えを推進することが目的です。
我々の安全な生活を支えるため、日本の社会資本を効率的に維持していくための新たな枠組みが、今、求められています。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。