Sohatsu Eyes
改革はコミットメントの時代へ
2006年11月07日 槌屋 詩野
今年7月、夕張市が財政再建の道へ動き出しました。苦渋の選択ではありますが、過疎地域の住民達の負担が増えるのは必至です。16年度、全国で経常収支比率が100%を超える赤字体質の市町村は184団体、95%を超える硬直化した財政を持つ市町村は1184団体、全国の3割と、他人事ではありません。要因分析でも、第三セクターの観光業への過剰投資、硬直的な組織体制との認識が強いですが、一方で、報道では夕張市住民が不安と不満を見せつつも「自らの関心があまりに低かった」と反省の声を漏らしていた点も看過できない事実です。確かに市民自身が慢性的に夕張財政を信用したことは、破綻の一端を担っているかもしれません。
様々な民営化手法による調達費用の削減効果があがる一方で、近年では保育園民営化等のサービスの質の低下が指摘され始め、経費削減の背景にある根本課題、つまり職員の意識改革の重要性が問われています。現在、そのカンフル剤として、市場化テストへの期待が高まっています。同じ土俵で、自治体職員自身の提案を、民間企業、NPO、個人による提案と、費用および質の両面で比較できるからです。
これにより市民コミットメント(関与)の新しい形が誕生する、と私は考えます。民間対公共という対決でなく、公共団体、民間企業、中間組織、個人、の様々な組み合わせで提案がなされ、市民と職員双方の意識改革に繋がります。監視する側/される側ではなく、協力的なコミットをする市民パートナーの形がようやく実現します。
市場化テストに伴う各自治体の急務課題は、情報開示でしょう。さらに近い将来、市民コミットメントが財政評価における評価基準に加えられるだろう、と私は考えます。説明責任(Accountability)を果たすことは、つまり財政基盤を持つ能力(Account + Ability)を示すからです。情報が市民へ正しく効率的に伝達されるように高い意識を持つ自治体には、良い提案、良い人材がいちはやく集まる、という時代はすぐそこまで来ています。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。