コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経営コラム

Sohatsu Eyes

ポストドクター

2006年07月18日 金子 直哉



科学技術は国力の源泉であり、日本の力を高めるために高度な知識を身につけた科学技術人材を育成することが重要であることは論を待ちません。そのために第1期及び第2期科学技術基本計画において自然科学系の博士号取得者の育成強化が図られ、「ポストドクター(大学院で博士号を取得した後、任期付き業務に付いている人などを指す)」を一万人規模で輩出するまでの成果が得られました。
しかしながら一方で、今後は「任期付き業務を終了した後で、博士号取得者があらたな就業場所を見つけることができない」、いわゆる「ポスドク問題」が生じることが懸念されています。こうした懸念の背景として「日本における、博士号取得者の企業への就業率の低さ」が挙げられており、その理由として「日本では、企業が求める能力を持った博士号取得者が育っていない」ことが指摘されています。

それでは、「ポスドク問題」の解消に向け、日本はどのような方策を取るべきなのでしょうか。そのための“グッドプラクティス”を、米国の博士号取得者の活躍に見つけることができます。米国では、大学院で博士号を取得した人材の内、4割強が大学に、3割強が企業に就職しているという統計データ(National Science Foundation, 2003年)が発表されています。大学よりは少ないものの、相当数の博士号取得者が企業での就業機会を得ていることが分かります。
何故、米国では博士号取得者の企業への就業率が高いのでしょうか。その理由を探ると、米国企業が博士号取得者を「研究開発の優れたリーダー」として認知している事実が浮かび上がります。つまり、米国の場合、「博士号を取得する」ことは「リーダーとしての能力を身に付ける」ことを同時に意味しているわけです。「新規概念の設定力」「先端科学の理解力」「科学動向の洞察力」などに特に優れた研究開発のリーダー、これが米国の博士号取得者のステレオタイプとなっています。

したがって、この米国のベンチマークに従えば、「博士号を取得する過程の中に、リーダーとしての能力を身に付ける教育環境やシステムを組み込んでいくこと」、これが日本として取り組むべき“次の喫緊の課題”になります。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
経営コラム
経営コラム一覧
オピニオン
日本総研ニュースレター
先端技術リサーチ
カテゴリー別

業務別

産業別


YouTube

レポートに関する
お問い合わせ