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Sohatsu Eyes

古くて新しいエネルギー

2006年07月04日 永嶋 英明



バイオガスは古くて新しいエネルギーです。日本の農村でも家畜の糞尿を屋根で覆っただけの簡素なタンクに溜めて自然発酵させ、発生したバイオガスを煮炊きなどに利用する例がありました。しかし簡易なバイオガスプラントではガスの発生量が天候に左右されて安定せず、また発生したガスにも悪臭や貯蔵が難しいなどの欠点もあります。そのためバイオガスを使っていた人々も、都市ガスのインフラが整備されたり、プロパンガスをボンベで購入できるようになると、不便なバイオガスの利用をやめていきました。そして再び脚光を浴びる最近まで、バイオガスは忘れ去られていたのです。

近年バイオガスが注目された背景には、批准国に二酸化炭素などの排出量の削減を義務づけた京都議定書の第一約束期間の開始が、2008年に迫っていることがあげられます。植物由来のバイオガスを燃焼させて発生した二酸化炭素は、植物が空気中から取り込んだものであるため、排出量にカウントされません。すでに省エネが進んで排出量の削減余地の少ない日本においては、バイオガスのような新エネルギーの導入が京都議定書の約束達成のためには不可欠です。

またエネルギー事情の悪い国では、農村部の生活改善のために政府がバイオガスの普及を後押ししています。例えば中国では政府の農業部が2006年から発足させた「九大行動」の「生態家園富民行動(生態環境の保全を通じて人々の生活を豊かにするという計画)」の項の中で、農村部のメタンガス施設建設投資を大幅に増やすことを明記しています。

今後、中国をはじめとする発展途上国の国民の生活水準が上昇すれば、エネルギー消費も将来的に増加していくと思われます。その時人々が化石燃料ではなくバイオガスを選択し続けるためには、それが人々にとって扱いやすいエネルギーであることが欠かせません。この点については、バイオガスを精製し、純度の高いメタンガスとして利用することが考えられます。また不安定な供給の問題に対処するためには、発酵条件を改善したバイオガス発酵槽を整備し、また供給源をネットワークして需要家にガス供給するシステムを作ることが考えられます。そうしたバイオガスの欠点を克服していくことではじめて、バイオガスは新エネルギーとしての地位を築いていけるのです。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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