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新エネルギー普及に向けた官民の努力

2006年06月20日 荒井直樹


総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会のRPS※法評価検討小委員会にて、RPS法の見直しが進められています。新エネルギーの普及拡大を目的としたRPS法は、電力会社やRPS事業者に対して、新エネルギーによる電力を毎年ある一定量供給することを義務付ける制度です。新エネルギー事業者は、RPS相当量というクレジットを電力会社などに販売することで事業性の向上が期待できます。RPS法の見直しを機に、新エネルギーの普及に向けてどのような課題があるか、改めて考えてみたいと思います。3つの視点があります。

一つ目は、官の視点です。RPS法では、2003年から2010年までの義務量が定められていますが、今回の改正では、2010年までの経過措置期間における義務量を変更することで、RPS相当量の供給過剰による価格下落や無価値化を回避しています。これにより、新エネルギー事業が安定し、新エネルギーの普及につながると想定されます。しかし一方で、一般的に新エネルギー事業は事業期間が10年以上となることが多く、2010年以降のRPS需要は不透明であるため、依然として新エネルギー事業の見通しは立てにくいのが現状です。今後は、2010年以降の義務量や、RPS相当量の最低価格の水準など、幅広い議論が必要になるのではないでしょうか。

二つ目は、事業者の視点です。新エネルギー事業は、初期投資が大きく、投資回収期間が長いという特徴があります。例えば、風力発電の場合は事業期間が約15~20年となっています。そのため、金融機関からのプロジェクトファイナンスを獲得し、レバレッジを効かせることが重要となります。しかしながら、新エネルギー事業は、風などの自然条件によって事業性が大きく左右されるだけでなく、売電価格やRPS相当量の販売価格などの市場取引における価格リスクなど、様々なリスクを保有しています。事業者には、一部販売価格を固定化するなどの柔軟な販売戦略や、金融商品の介在などを検討することで、適切なリスクをとりながら事業性を高める工夫が必要となります。

三つ目は、金融機関の視点です。上述のように、金融機関はプロジェクトファイナンスや、金融商品の開発・販売という重要な役割を担っています。今後は、リスクの洗い出しを前提とした上で、バイオマス発電事業や風車に蓄電池を併設する先進的な風力発電事業など、新しい事業や分野へのファイナンスを進めることで、さらなる新エネルギーの普及が期待できます。

新エネルギーの普及は、エネルギー安定供給の確保、環境の保全などの観点から非常に意義の高い取り組みです。今後のさらなる普及拡大に向け、官民双方のもうひと頑張りが必要となりそうです。

※RPS
Renewables Portfolio Standardの略。
新エネルギーによる発電は、電気的価値と環境価値に分けることができ、環境価値の部分をRPS相当量という。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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