コラム「研究員のココロ」
派遣社員の本格的活用による自治体のスリム化を
2006年12月11日 山中 俊之
進まない自治体での派遣社員の活用
現在、財政難に悩む多くの自治体で、定員削減が検討・実施されている。
定員削減については、削減された職員が担当していた業務を、誰が、どのように、担うのかが重要な課題となる。
そのような状況の中、派遣会社からの派遣社員の活用は、「アルバイトの活用よりも、コストがかかる」「自治体業務に通じた派遣社員が少ない」といった理由で、自治体で積極的に活用する動きは、まだまだ少ない。
今後派遣社員の活用が進む3つの理由
しかし、今後は、派遣社員の活用が、自治体再生のひとつのキーポイントになると思う。
その理由としては、以下の3点が考えられる。
第一に、専門技術を備えた派遣社員を、さほどの研修なく即戦力として活用できる点である。すでに派遣社員を活用している自治体では、例えば、総務・庶務的業務につき、研修をほとんど実施せずに、IT技術力の高い派遣社員を即戦力として活用している例もある。窓口業務でも、派遣社員の活用の可能性が高いという意見も関係者の間で強くある。
第二に、繁閑に応じて、派遣社員の数を調整できるので、コストの削減に繋がることである。自治体の場合、例えば、選挙管理委員会ように、選挙の時期しか忙しくなくても、多くの職員を抱えている部署がある。
第三に、これらの専門技術のある派遣社員を、時機に応じて、派遣会社が責任を持って派遣できることである。自治体が、職員の採用などに煩うことはない。自治体にとって採用等の間接コストの削減になる点を見逃してはならない。
以上の点を考慮すれば、派遣社員の活用は、自治体業務を担うのに、十分に費用対効果が見合う場合があると考えられる。
派遣社員が活用できる業務とは?
では、いかなる業務に、派遣社員の活用が、費用対効果の点で適切なのであろうか。
例えば、単なる入力作業など、単純業務の中で細切れの業務は、嘱託職員やアルバイトの活用が望まれる。
それに対して、筆者が、多くの自治体でのヒアリングから分析した結果では、派遣業務に適した業務としては、
- 文書集配やパソコン入力などある程度まとまりのある単純作業
- 医療事務など一定の専門性が必要な業務
- 決算や選挙管理、時期が集中する申告・申請業務など、年間を通じて、繁閑が大きい業務
などが考えられる。
その他、公務員としての経験が生きる業務については再任用職員、まとまりがありアウトプットが明確な業務については委託、独立した外部施設については指定管理者や民営化が検討課題となる(後掲の参考図参照)。
派遣社員を活用する際の課題としては、個人情報保護の問題、一部業務などで、一定年数以上派遣が継続すると雇用義務が発生すること、などが上げられる。
しかし、前者は、筆者が自治体でのヒアリングで確認・分析したところ、派遣会社との間の守秘義務に関する契約で十分対応できるものが大半であると考えられる。また、後者の雇用義務発生についても、単純な庶務業務など一部の業務に限定されており、全体的な影響は大きくないと考えられる。
派遣社員を大いに活用して、自治体のスリム化が進むことが望まれる。