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Sohatsu Eyes

談合事件と公共の調達

2006年06月06日 三室 かな江



昨年5月に国交省地方整備局や旧日本道路公団の発注した鋼鉄製橋梁談合事件を皮切りに、公正取引委員会による談合摘発の報道が相次いでいます。

談合は何故繰り返されるのでしょうか。私は理由が大きく二つあると考えています。一つ目は、発注者である公共側が市場感を持つ仕組みがない点です。一体どの程度の価格で事業を行いたいか市場感がなければ、企業側から提示された相見積りの結果だけを頼ることになってしまいます。
二つ目は、価格のみで比較する入札制度の限界です。どこから購入しても全く同じ商品ならば価格のみの判断で問題はないでしょう。しかし、機能、性能、特徴の異なる各企業の商品から一つを選ぶ際の判断基準が価格だけなのは、分かりやすいだけで根拠としてはしっかりしていません。企業側としては、受注意欲と経営の間に挟まれて談合に走ることとなります。

上記の理由に対して、私の考える解決策は二つです。一つ目は公共側がもっと横のつながりを持ち、情報交換によって市場感を掴むことです。公共施設はwebやチラシで価格を比較するという訳にはいきませんし、何十年に1回という事業の場合は過去の資料も参考にはなりません。しかし、同様の施設は全国に多くあるのです。自治体同士が活発に情報交換できる場があれば、適正価格や施設に関する判断の材料を入手することが可能です。
二つ目は、最低価格=最良の調達という意識を公共側が捨てることです。価格以外の面を評価し、最低価格ではなくても本当に良い買い物をしたいという姿勢を公共側が持てば、企業側はそれに応えて価格以外の差別性をアピールできます。価格以外の要素も考慮して受注者が決まる場合は、結果が分からないので談合もしにくいというメリットもあります。

ただし、この実現には、価格面以外のどこをどう評価するかを検討する必要があります。これは時間のかかることですが、購入スタイルが変らなければ販売スタイルも変りません。賢い消費者が企業を育てるという意味で公共側の調達の仕組みに変化が起きることを望みます。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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