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コラム「研究員のココロ」

電子カルテ等病院システムの導入準備について

2006年12月04日 根本大介


 電子カルテシステム導入前の準備は重要事項です。電子カルテシステムやオーダリングシステム等病院全体システムを導入した医療施設で、導入するまでは「テレビや冷蔵庫のようにスイッチをいれて、使うだけ」と考えていたという声をよく耳にします。

 実際には、システムを使用する前段階で設定項目が数多く存在します。各種マスタの整備、機器配置、操作研修、画面修正、出力帳票の確認、入力操作権限等の詳細なルール作り、これら諸々の準備が必要です。

 電子カルテシステム等の業務システムは、業務運用と密接に関係しており、運用自体をどのようにしていくかという問題と照らし合わせながら導入していく必要があります。当然その中で、決定権をもつ立場の方がルール作りをしていくわけですが、その決めごとが非常にやっかいです。病院はじまって以来の病院全体業務改善となり、全部門をまきこんでの壮絶な改革となるでしょう。
 その結果、しっかりとした基盤が無ければ、その時の流行や各所的な意見が飛び交い、全体を見据えた方針決定が困難になることが多々あります。
改革を進めるにあたって、確固たる導入目的・方針に基づき、「組織・費用・方法・時期」を考慮し、電子カルテ導入を決断しなければなりません。

 困難な理由は、情報の非対称性にあります。医療業務とITはその点で似ており、どちらも情報の非対称性が高いと言えます。提供する側(システムベンダー)と提供される側(医療施設)の間で知識量が著しく異なっているということです。情報格差の高い業種では、費用や方法が適切かどうか判断しにくいのです。
医療業務の面から言うと、大多数の患者は、医師に比べて医療に関する知識が少なく、自分自身で検査内容や投薬が芳しいものなのかを判断することが困難です。
現在では、ご存知の通り、セカンドオピニオンを求めるなどで、第三者を入れて、情報の非対称性を緩和することが可能です。
 同じようにITに関しても、システム導入のセカンドオピニオンとして、コンサルティング・ファームの存在意義があります。

 各部門システムについては、情報の非対称性がより顕著に現れています。提供する側(システムベンダー)とされる側(医療施設)だけではなく、医療施設内においてもその担当部門でないと業務を理解できるだけの情報を持ち得ないのです。その情報を持たないまま、資金投入先としてそれが重要か否か、高額なのか安価なのか、事務・経営部門は判断していかねばなりません。
 病院には検査システム・財務システム・原価管理システム・健康診断システムなど、多岐にわたる部門システムが貴院には導入されています。その内容について、確かな根拠をもって導入できているかどうか、点検する必要があります。病院全体に影響しない細部のシステムであっても、運用の一環を担っており、また、基幹システムとの接続も発生します。決しておろそかにはできないものです。

 したがって、病院の全体システム・部門システムを考える際、システム導入の「セカンドオピニオン」として外部調査員を交え、データに基づいた導入理由など導入前検証を行い、「組織・費用・方法・時期」における多角的な分析をしていく必要があります。「組織」づくりについては、どのようなメンバーで委員会立ち上げるか・情報部門のメンバーをアウトソーシングするなどして増員すべきか、自前で可能かどうか、後々の運用に影響してきます。「時期」については、DPC導入や医療改定のタイミングなどを意識したシステム化をしなければ、システム変更などによる二重投資になりかねません。また、すべては「費用」とのバランスで決定していきます。情報部門や各部門まかせの組織づくりや、費用の大切さを無視した決定・根拠の薄い決定は非常にもったいない結果を生みます。

 我々のようなコンサルティングファームでは、システムの導入にあたり、徹底した調査・データ収集からはじめます。すべての分析は、流行や個人的・各所的な意見ではなく、データに裏づけされた報告となります。システム導入のセカンドオピニオンとして上手に活用してみてはいかがでしょうか。
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