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コラム「研究員のココロ」

ウォームビズ成功の鍵は「わかりやすさ」にあり!

2005年10月31日 宮田雅之


 百貨店各社の秋冬商戦が本格化してきた。店内を見渡すと、「WARM BIZ(以下、ウォームビズ)※」をテーマにした売場がチラホラ目に入る。業界関係者は、ウォームビズに「COOL BIZ(以下、クールビズ)」を上回る経済効果を期待しているようだ。
 クールビズの成功を振り返りながら、“消費者の視点”で「ウォームビズ成功の鍵」を考えてみたい。
※ウォームビズとは、温暖化防止に向けて、室温20度でも快適に仕事ができる秋冬版の暖かいビジネススタイルのこと。

クールビズは何故成功したのか?

 この夏を振り返ってみると、確かに、ノーネクタイのビジネスマンを見かける機会が多かった。
 筆者自身も、クライアント企業を訪問する日も含め、この夏の殆どをクールビズで過ごした。
 筆者の実感として、クールビズが好評を博した要因は、以下の3つに集約される。
要因1:メリットがあった
クールビズにすると、ネクタイによって狭められていた首周りが開放されるため、通気性が確保され、とにかく涼しい。特に、暑い日の外出時には、その効果は絶大であった。
 どちらかと言うと“暑がり”の筆者にとって、そのメリットは大きく、一度やったらやめられなくなってしまった。

要因2:大義名分があった
一般的に、ビジネスマンにとってネクタイは必須アイテムである。ネクタイを締めることによって「フォーマル」感が演出されるため、筆者自身、ビジネスシーンにおいてネクタイをはずすことへの「抵抗感」を少なからず持っていた。
 しかし、あるクライアントの社長から「暑いですから、次回の打合せはクールビズで来て下さい。私もそうしますから。」と言われた。政府お墨付きの「環境問題」への取り組みの一環、という大義名分(仕掛け)は、ネクタイをはずすことの精神的なバリア(後ろめたさ)を取り除く効果が大きかった。

要因3:簡単であった
クールビスは、極論をすれば、ネクタイをはずしただけで出来上がる。何か新しいアイテムを購入しなくても、やろうと思いさえすれば簡単に出来る。
 筆者自身、クールビズをカッコ良く見せるためのアイテムである「襟の高いシャツ」を新たに購入したが、ネクタイ着用時も使うことが出来るので、余計な出費をした感覚は無かった。

クールビズの課題

 しかし、クールビスにも課題は残されている。ファッションの一つのスタイルでありながらも、必ずしも「ファッショナブル」と認知されていない点である。
 単にネクタイをはずしただけでは間の抜けた印象は否めなく、むしろネクタイをした方がカッコいい。来年以降、定着化するためには、クールビズ=「カッコいい」という図式を成り立たせることが必要ではないだろうか。


ウォームビズは成功できるのか?

 その点ウォームビズは、ファッション性の問題は比較的容易にクリアできそうだ。
スーツの下に着てもスマートにみえる「ハイゲージニット」など、重ね着による「組み合わせの変化が楽しめる」とされている。

 しかし、ウォームビズはもっと根本的な問題の解決がまず必要である。
それは、「クールビズ=ノーネクタイ」のように、わかりやすい“ウォームビズの定義”が消費者に認知されていないことである。


「わかりやすさ」が鍵を握る

 「ウォームビズ」という言葉自体はそれなりに浸透しつつあるものの、「ウォームビズって何?」と質問された時、どのようなファッション・スタイルなのかを明確に答えられる人は少ないのではないだろうか。
 環境省の有識者委員から「ベストを着たり、シャツの下にハイネックを着ける」「女性はスカートからパンツに変える」「帽子をかぶったり下着を工夫する」といった案が出されたそうであるが、バリエーションを提示するよりも、まずは「ウォームビズ=○○」と誰もが共通の認識を持てるように、一つの象徴的なスタイルに絞った情報発信を行うべきではないだろうか。

 先の衆議院議員選挙で小泉自民党が圧勝したが、その大きな要因として、「郵政民営化の是非を問う選挙」と争点をわかりやすく訴えることに成功したこと、が挙げられている。広く多くの人々の支持を得るためには、本質論(中身自体の良し悪し)以上に「わかりやすさ」が重要であることを、思い知らされた。
 このコラムがホームページに掲載される頃には、ウォームビズの「わかりやすい定義」が世に示され、筆者の心配が杞憂に終わっていることを願っている。
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