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Sohatsu Eyes

自然的原因の評価

2005年06月21日 澤野 哲也



2年前に土壌汚染対策法が施行され、有機化合物や重金属、農薬など25種類の物質が法の対象物質として指定されました。それぞれの物質に濃度の基準値が設けられ、基準値を超過すると「土壌汚染」であると判断されます。

これらの物質のうち、一部の重金属には「自然的原因」という解釈があります。砒素や鉛などの金属はもともと広く自然界に存在するものであり、場所によっては基準値を超過する可能性も当然あるという考え方です。法の解釈上、濃度の基準値超過が自然的原因であれば土壌汚染ではなく、人為的原因であれば土壌汚染となります。

自然的原因であると判断するための基準は、状況によっていくつかのパターンがありますが、概ね次の3点に集約されます。(1)砒素や鉛、ふっ素など自然界によくある物質であること、(2)基準値の超過レベルがそれほど大きくないこと、(3)局在性がなく周辺の土壌からも同程度の濃度の物質が見つかること、です。これらを総合的に評価し、自然的原因の可能性が高いか否かを判断します。

自然的原因であるといえるかどうかは、土地の所有者にとって死活問題です。例えば、土地を売却する際に重金属の基準値超過があった場合でも、自然的原因であると説明できれば正常なきれいな土地として取り扱われます。買い手もそれほど問題視しないケースが多いようです。一方、人為的原因-すなわち土壌汚染あり-と判断されれば、浄化費用が必要となります。売り手側で浄化してから売買をするか、もしくは浄化費用を差し引いた価格にて売買を行うことになりますが、いずれにせよ売り手にとって大きな経済的損失となります。

自然的原因に関する事例はまだそれほど多くはありません。そのため、一回の汚染調査の結果で明確な判断を下せず、やむを得ず追加調査を行うこともあります。しかしながら、今後事例が蓄積されていけば、判断基準や手順が今より明確化され、経済的及び時間的コストの抑制に繋がると考えます。土地の円滑な取引・流動化を進め、日本経済を上昇させるためにも、関係者のさらなる努力に期待します。

※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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