Sohatsu Eyes
風力発電の高付加価値化
2005年08月09日 井上真壮
経済産業省は、来年度より風力発電に併設される蓄電池に対して補助金を交付する計画を打ち出しました。風力発電はクリーンな内国産エネルギーとして普及が期待され、2010年に300万kWという高い導入目標が設定されています。しかしながら、その発電の不安定さから系統への悪影響が懸念され、近年は導入量を制限している地域もありました。今回、蓄電池併設型の風力発電モデルが政策として打ち出されたことで、導入制限が緩和され、風力発電の導入が拡大することが期待されます。
今回の補助制度の目的は電力系統の品質への影響を抑制することですが、将来的には風力発電と蓄電池、また制御可能な発電機を組合せることで電力小売ビジネス(PPS事業)も可能になるかもしれません。日本総研は、DESS(Decentralized Energy System & Software)コンソーシアムで分散型電源の制御の検討を実施していますが、その一つのテーマは「風力発電の高付加価値化」です。コンソーシアムでの検討の内容は、大きく2つです。1つ目は、発電量の予測技術や制御技術の活用によって初期投資の負担をできるだけ抑制すること(蓄電池の容量を抑制すること)、2つ目は制御技術によって電力の品質や量を安定化させることで電力の価値(売電単価)を向上させることです。電力会社に依存したビジネスモデルでは売電単価を高めることは困難です。価値向上のためには、他の事業者(例えばPPS事業者)が購入できるレベルにまで量を安定化する必要があります。
既にぎりぎりの採算で事業をしている風力発電事業者にとって、蓄電池を併設しても電力の価値(売電単価)が上がらなければ、新たに生じる蓄電池分の初期投資を回収することはできません。そのため、当面は蓄電池併設の効果(発電量の変動の抑制)に対して売電単価の優遇を行うなどの運用時の支援が必要でしょう。ただし、当然のことながら、支援を必要とする事業の市場は限定されます。本当の意味で風力発電市場が拡大するためには、電力会社への依存体制から脱却することが必要です。そのためには発電量予測技術、電源制御技術が重要であり、その開発・実用化が期待されるのです。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。