Sohatsu Eyes
選択の可能性が鍵
2005年10月04日 市川 元幸
朝夕を中心に、めっきり涼しくなってきました。今夏の話題のひとつは、クールビズでした。二酸化炭素削減量などの科学的な省エネ効果についての検証はこれからですが、出勤時のサラリーマンの49.2%が上着・ネクタイなしだったという調査結果(注)をみると、概ね好意的に受け入れられたといえるのではないでしょうか。
「よろず世の中で当たるものにはわけがある」といいます。クールビズの場合、夏の暑さ対策としての合理性、ネーミングのよさ、政財界リーダーなどによる演出効果などもありましたが、人々に広く受け入れられた真の要因は、楽しみ方の選択肢が利用者側にあったことではないでしょうか。
政府の呼びかけは、要すれば、「冷房の室内設定温度を少し上げて、そのかわり服装はご自由に」というものです。この「ご自由に」というところがミソです。個人の服装センスの領域にまで立ち入って、政府が画一的な注文をしていれば、むしろ反発の方が大きかったでしょう。
環境を重視しようという人々の嗜好は、今後のビジネス展開において踏まえておくべき、時代の底流のひとつです。しかし、ビジネスの成否は、単に世の中の潮流に沿っているということでは決まらず、ほかにも具体的なアイデアや着眼点などが必要です。例えば、省エネビジネスでは、環境への貢献という目的を達成しつつ、利用者側の選択を可能にする工夫が重要となるでしょう。
日本総研は、民間企業約20社と組成したDESS(Decentralized energy System & Software)コンソーシアムで、マイクログリッドを含む分散型エネルギーシステムのビジネス化に取り組んでいます。そのなかで、利用者側の選択を可能にする制御など、顧客志向のサービスを実現させたいと思っています。
(注)8月18日付博報堂生活総合研究所プレスリリース
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。