Sohatsu Eyes
地域ブランド
2005年12月20日 金子 直哉
今年の6月に国会で商標法の一部が改正され、地域の特産品や名物商品を「地域ブランド」として商標登録する条件が緩和されることになりました。この改正商標法は、来年の4月から施行されることになります。
改正のポイントはいくつかありますが、"地場産業"に従事する人々にとって最も魅力的な点は、「地域名と商品名だけから成る地域ブランド」を"かなり早い段階"から商標登録できるようになったことにあります。
例えば、ある地域のグループが、工夫を重ね、他にはない独特の味わいの農産品を開発したとします。従来の制度では、開発に成功したグループが農産品の全国販売に乗り出そうとしても、その段階では「グループが所在する"地域名"」と「開発した農産品の"商品名"」だけから成る「地域ブランドの名前」を商標登録することが困難でした。全国的な評判を得た後でなければ、登録することが認められていなかったためです。
全国レベルで認知される前に登録する方法として、「地域名」と「商品名」にプラスして「識別性の高い図形」などを組み合わせて申請することは認められていましたが、この場合だと逆に、少し図形を変えただけで「同一名の商品」が市場に出回ってしまうというデメリットがありました。
したがって、せっかく地場産業の中から独特の商品が生まれても、この商品に「地域ブランドの名前」というもう一つの魅力を付け加え、全国への拡販を図ることができなかったわけです。
こうした環境が来年の4月から変わります。公正を期するために、承認の前提として「全国的とまでは言えなくても、複数の都道府県に及ぶほどの周知性を獲得していること」や「商標の申請者が事業協同組合や農業協同組合などの地域の団体であること」などの制限は定められていますが、いずれにしても「地域ブランド」という商標を武器に、独自の販売戦略を展開する自由度が大いに高まります。
地場産業に従事する人々にとって、まさに「"地元の良さ"をアピールする智恵比べ」が始まることになります。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。