Sohatsu Eyes
市場化テスト
2006年02月07日 澤野 哲也
今年は市場化テストが本格的に始まります。市場化テストとは、従来、国や自治体などの公共が実施してきたサービスを官民競争入札にかけ、コストやサービスの内容が優れているものに事業を実施させるという制度です。民間のほうが優れている場合、その公共サービスは民間が実施することになります。昨年から、ハローワークでの職業支援や社会保険庁の保険料徴収などの業務で市場化テストが進められてきています。さらに、法案化に向けた準備が進められており、今後対象業務が拡大される見込みです。
民間が公共サービスを実施した場合の懸念点としては、民間が利益追求を優先しないか、公共が実施した場合に比べサービスの質が低下しないか、という点が挙げられます。また、公共の職員の処遇をどうするかという点も問題となります。サービス実施を民間に移管することにより、それまで同サービスを提供してきた公共の職員が失職することになります。これに対しては特定退職制度が設けられる見込みです。これは、公共の職員が民間で働いた後も公共部門に復帰できる、退職金の額についても不利にならない、という制度です。人件費の削減による公共事業のスリム化という観点からは、同制度の実効性に疑問も残りますが、従来の公共事業の壁を打破するという点では有効であると考えます。民間にとっても、業務に関する知見のある人員を一定期間受け入れることにより、そのノウハウを吸収できるメリットがあります。
当センターでは、ごみ処理事業などを中心に、従来自治体が実施していた公共事業に民間のノウハウを有効活用し効率化をはかるPFI事業を積極的に推進しています。PFI事業は、公共事業を民間に任せるという点で、市場化テストに通ずるところがあります。業務におけるさまざまなリスクに対し、最もうまくコントロールできるものがそのリスクを負担し全体として効率化を図るという点では、市場化テストもPFI事業も同一であると考えます。PFI事業の一層の拡大のためにも、市場化テストの今後の動向を見守りたいと思います。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。