Sohatsu Eyes
廃棄物事業の最前線
2006年03月22日 副島 功寛
近年、地方自治体が行う廃棄物処理事業では、官民連携による公共サービスの質の向上と財政負担の軽減が図られてきました。そうしたなか、PFIやPFIに準ずる事業方式を導入することによる効果は広く知られるところとなりましたが、今日の廃棄物処理事業の最前線では、関係者の創意工夫と真摯な努力に後押しされるなかで、よりレベルの高い事業が生まれつつあります。
姫路市は現在、ごみ焼却施設、再資源化施設、周辺施設を一体的に整備する「(仮称)新美化センター整備運営事業」の事業者選定に向けた準備を進めていますが、市は、その事業に、いくつかの先進的なスキームを取り入れています。
ひとつは、廃棄物発電に伴う売電の権利を事業者に譲渡するスキームです。電力自由化の進展にともない、売電価格は一段と流動性を増すと考えられますが、民間事業者はそうした動きをビジネスチャンスととらえ、エネルギー事業のノウハウを蓄積しています。リスクをとってリターンを得ることが難しい公共団体にとっては価値が低い権利でも、先進的な知識やリスク管理能力を背景にリターンを求める民間事業者にとっては、継続的に発電を行うことができる廃棄物処理事業の売電の権利を20年間にわたり確保できることは大きな魅力です。一方、市にとっても、事業者が売電の権利を高く評価することで、委託費を削減することができ、より大きな財政メリットを得ることができます。事業の自由度を高めることは、関係者の利害調整に多くの労力が必要となり、また説明責任も強く求められることになります。しかし、それを引き受ける意思のある公共団体は、結果として自らの事業価値を高めることができます。
もうひとつは、事業期間のみにとらわれず、事業期間終了後までを念頭においた契約方法を検討している点です。入札を行う当該事業は20年間を事業期間としていますが、処理技術の向上に伴い、廃棄物処理施設は20年超の使用が一般的となっています。当初の委託契約のなかに事業期間終了後を見据えた規定を盛り込むことで、施設のライフサイクルでの事業の最適化を目指しています。
また、再資源化施設では、運転は公共が行い維持管理補修を民間が行う「DBM」という事業方式を採用しています。事業の自由度を高め、民間に多くを委ねることは、一方で民間事業者が収益追求に傾倒しすぎた場合、公共サービスの安全性が損なわれるリスクも内包しています。PFI事業の経営破たんや事故の発生事例が報告されていることもあり、すべてを民間に委ねるだけでは事業の最適化が図れないという意識も芽生えつつあります。DBM方式は官民のリスク分担が難しい事業方式ですが、公共の技術レベルを確保し、事業がブラックボックス化するリスクを低減するという利点もあります。長期的な公共の経営を考えた場合、技術の知見を有する人材を相応に確保することが必要との考えです。
先例にとらわれることなく民間の動向や公共のあり方について議論をし、先進的な取り組みに挑戦することで、廃棄物処理事業は新たなステージを迎えつつあります。今後、公募手続きが進むなかで、こうした取り組みが実を結ぶよう、精力的な活動が続けられています。
※eyesは執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。