コラム「研究員のココロ」
ISO9001(QMS)認証取得について
2005年05月16日 仲井 茂
私どもが企業を訪問し「ISO(国際標準化機構)」認証取得の話を切り出しますと、経営者のなかには“何故そのようなことに多くの労力と費用をかけなければならない”あるいは“認証取得後にも大変な事務負担がかかると聞いている” とかいった反応を示されるケースがよくあります。
しかし、実際にISO9001を取得し、これをマネジメントシステムとしてしっかり運用されている企業では、大変な成果を上げていることは間違いのない事実であります。「ISO(国際標準化機構)」の先進国である米国のあるコンサル会社の調査では(認証取得済企業のサンプル数1600社)具体的なメリットとして、
- 不良品や機械補修の減少
- 顧客の苦情の減少
- 製品開発の所要時間の短縮
- P/Lプレミアム(保険料)の節減
- 利害関係者間の意思疎通の改善
等を上位にあげています。
特に、・認証取得後には、顧客の約3割が製品(サービス)の改善に気が付いた。
生産費用が平均1割の削減となった。社員の約15%が社内の体質のよい変化を感知した。などといった報告も数多くあげられています。
ところで、2000年の改訂後におけるISO9001は、「品質マネジメントシステム」といわれるように経営システムとしての規格の色彩を強め、単に製造・サービス品質管理にとどまらず、会社全体のトータル品質管理となっています。このため、ISO9001の認証取得は、経営管理サイクル(いわゆる「PDCAサイクル」)を企業に導入することになり、経営システムとして企業風土の改革や、人材の教育という大きなメリットが得られます。改めて2000年版の特徴をまとめると次のとおりです。
- すべての業種、規模の会社に適用される
- トップマネジメントの責任と役割の強化
- システムの継続的改善(PDCAサイクル)
- プロセスアプローチの採用
- 顧客満足、顧客要求事項を満たしていることへの監視、維持
- 資源充実(人的資源、物的資源、情報、教育訓練、コミュニケーション等)
そもそもわが国におけるISO9001とはグローバル経済が進展し、当初は、海外との取引をしている企業やインターナショナルな活動を行う製造業が中心となってISO認証取得が進められてきました。しかし3~4年前(2000年版への移行)から、国内取引中心の企業においても、ISOシリーズの品質保証体制を有する企業への評価や関心が高まり、業種・規模を問わず、取引上のメリットを享受できる規格であるとして、これに取り組む組織が急増してきています。事例として建設業、印刷業、卸・小売業はもちろんのことレストランや老人ホームといったサービス産業や病院などにまで裾野は広がってきています。