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コラム「研究員のココロ」

飲食店・小売店の顧客満足度向上を目指して(その2)
~経営改革ワンポイントアドバイスシリーズ(No.8)~

2005年04月04日 佐藤邦明


経営改革クラスターが携わったコンサルティング事例から、課題解決に効果が高かった視点・手法を、ワンポイントアドバイスの形でご紹介しております。詳細については、クラスターに直接お問合せください。

来店客の8割は接客に不満

 前回は、飲食店・小売店の顧客満足度を向上させる手段として、顧客アンケート調査とモニター調査による自店の弱点把握が有用であることを述べさせていただきました。(2004.9.21付「研究員のココロ」ご参照)今回はその中でも接遇の重要性と接遇教育についてもう少し言及させていただきたいと思います。
 ここに先日インターネットで検索した記事があります。(平成16年10月30日付河北新報社記事より)この記事は、岩手県内の小売業・サービス業の接客マナーについて岩手経済研究所(盛岡市)が行った調査結果を紹介したものですが、驚くことに顧客の約8割が接客に何らかの不満(不満:17.4%、時々不満:66.4%)を持ったことがあるとされています。その原因としては「笑顔がない」が40.3%でトップ、ついで「態度が乱暴・不誠実」「長時間待たされる」「あいさつが悪い」などがあげられております。そして注目すべきは客側の対応であり、「不快感を伝えず店の利用をやめる」が64%と圧倒的に多かったということです。
 小売店・飲食店で最も怖いのが来店客の減少であることは前回述べさせていただきましたが、接客マナーを向上させることがいかにお店の業績向上に直結するものであるか、この調査でも裏付けられていると思います。


繁盛店の条件

 言うまでもありませんが、お店を繁盛させるためには一定の要件が必要です。他店との差別化を図るために、独自の商品開発に注力する店、百円ショップのように価格訴求を行う店、都心の一等地で映画に出てくるような店舗で集客する店など、差別化の切り口は色々ですが、これら繁盛店に共通していることは、「商品」、「価格」、「立地」、「雰囲気(店舗)」、「人的サービス(接客)」といったマーケティングの基本事項で、他店には絶対に負けないという優れた項目があるということです。
 ただ、これらの差別化要件の内、「人的サービス(接客)」を除けば、他の要件についてはある程度経営者の才覚やお金で解決できる面があります。ところが「人的サービス(接客)」だけは一朝一夕の努力で一流になることはできません。特に「接客」には、来店客に「心地よい空間を提供」し「楽しく」食事をしたり買い物をして頂くという面がある一方で、店として販売したい商品や利益率の高い商品を顧客に買ってもらえるようお勧めをする(セールスを行う)という面があるため、一定の「接遇技術」が必要であり、時間をかけた教育が必要となります。また、接遇向上のための投資は「店舗の改装」とか「価格の引き下げ」と言った短期間で効果が見える差別化要因とはならないため、経営者としてはついつい後回しにしたくなる項目です。
 ところが一旦接遇水準の上がった店は、顧客評価が固まりその結果来店客に大きな変動がなくなるため、不況に強い体質となります。もちろん、絶えず客のニーズと競合店を睨みながら品揃えを変え、商品内容を向上させ、イベントを工夫するといった売上努力は必要ですが、頻繁に店舗改装をしたりバーゲンセールを行わなければ売上が落ち込むと言った事態は、かなり避けられるようになっていきます。(筆者の知っているある飲食店は、接遇水準の向上に店をあげて取り組んだ結果、この消費不況の中一度も改装や大きなメニュー変更をせずに4年連続増収増益を続けています)


接遇教育の基本

 接客を考えるとき常に心掛けておかなければならないことはたったひとつ、最低限お客様に不快感を与えないようにすることです。つまり、良い接客マナーを学ぼうとしたら、まずやってはいけない事項(接客におけるタブー集)をマスターすることが先決です。
 タブーは色々ありますが、例えば筆者が飲食店や小売店でよく眼にする光景に「従業員同士のおしゃべり」があります。来店客にしてみるとこの光景は、「自分が歓迎されていない」、「自分が無視されている」、「自分が軽く見られている」という気持ちにつながり、非常な不快感を覚えることになります。またお客が店内に入っても、「いらっしゃませ」のひと声がないお店も未だに多く、従業員教育に疑問を持たざるを得ないケースが多々見受けられます。
 接遇教育を行う場合は、まずこのようにやってはいけない事項を従業員から色々挙げてもらい、それら禁止事項をしっかりと意識してもらったうえで、「笑顔」での接客や「丁寧な動作」といったお客を「満足させる」接客にレベルアップしていくべきと考えます。


接遇技術の3要素

 最後に接遇技術を構成する3つの要素について簡単に述べさせていただきたいと思います。接客を行う場合は、これらの要素のどれが欠けても良い印象は持たれず不満の原因となります。3要素を列挙すると次のようになります。一つ目は「言葉」、二つ目は「話し方」、そして三つ目は「動作」です。各要素のポイントは下記の通りです。

(1)「言葉」のポイント


・来店客への声かけ(「いらっしゃませ」は基本の基)
・感謝の気持ちを上手に伝える(「ありがとうございます」の使い方)
・否定言葉や命令言葉を避ける(代替案の提示やお願い言葉への言い換え)

(2)「話し方」のポイント


・笑顔で話す(笑顔は最大の歓迎表現)
・大きな声で話す(小さな声は自信がなさそうだし聞きづらい)
・ゆっくりと落ち着いて話す(早口では追い立てられるような感じ)
・相手をみて話す(そっぽを向いて話すといやいや接客しているかのような感じ)

(3)「動作」のポイント


・お辞儀の使い分け(挨拶、お願い、お礼、謝罪)
・機敏な動作(近づく、遠ざかる)
・丁寧な動作(説明やセッティング)
・素早い作業(包装や会計)

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