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コラム「研究員のココロ」

サステイナビリティ・バンクを作ろう!
~エネルギー×お金+働き方~

2005年03月14日 村上芽


 エネルギーとお金。そう聞いて、何を思い浮べるだろうか?
省エネは家計や企業にとってお得で、環境にもいい。そんなふうに思う人がだんだん増えてきた。でも、もっといろんなつながりや使い方があるのではないか?という視点から、サステイナビリティ・バンクを作ろう!に思い至るまでを、ご報告したい。


エネルギーとお金の共通点

 エネルギーとお金の共通点は何だろうか?答えはいろいろある。例えば、当たり前すぎるが、どちらも現代の生活にとって不可欠な、道具だということ。それから、これまで、なんとなく「多いほうが豊かものだ」という感じがしてきたということ。お金は、これからも当分そうかもしれない。エネルギーは、省エネの価値が浸透してはいるものの、まだまだ節約というイメージもある。そして、今日取り上げたいのは、どちらも使う立場になると「色がない」ことだ。お金は、どんな風に手に入れた1万円でも、どこでも1万円として使える(もちろん偽札は別です)。エネルギーは、ここでは電気に絞ると、どんな風に作られた電気でも、同じだけの明るさを届けてくれる。


グリーン、あたたかみ、フェア

 ところが最近、使い手にとって「色がなかった」ことが、少しずつ変化している。少しずつ新しい「色」が生まれている。
 その代表が、環境に配慮した製品を選んで買おうという「グリーン購入」「グリーン消費」、自然(再生可能)エネルギーで出来た電気を指す「グリーン電力」など、「環境」をイメージするグリーンである。環境に配慮した企業に投資する「エコファンド」の色も、イメージは緑色だろう。更に、そうした商品を買ったり金融機関を通してお金を出したりするのに留まらず、目に見えなかったエネルギーにも自分たちでこだわって、自分たちで直接お金を集めて投資してしまおうという動きが、「市民太陽光発電所」「市民風力発電所」などの取り組みで、これらはエネルギーとお金の両方にグリーンという色を加えている。
 また、地域通貨やポイントなど、特定の地域やコミュニティに限定して使える「価値」を作る動きも、特に「お金」に対して「あたたかみ」という色、質をつけたものであろう。地域通貨ではよく、地域の資源を循環させること(地産地消など)が取り上げられるので、電気や熱という直接的なものではなくても、エネルギーを循環させているともいえるだろう。
 最後に、「フェア」(公正)を取り上げたい。グリーン消費と重なる点もあるが、「フェアトレード」は、適正な価格(中間マージンを省いて)で継続的に取引を行うことで発展途上国での開発・生活支援をしようとする「買物」の行動である。これも貿易といういかにも巨大なお金に対して、意味づけ、色づけをしようというものだ。また、最近のCSR(企業の社会的責任)を投資基準とする動きも、フェアの1つといえるだろう。フェアなエネルギーというのはあまり聞かないが、化石燃料のように資源を持つ国と持たざる国の差が大きいのに比べて、自然(再生可能)エネルギー、特に太陽光が戦争を引き起こさないエネルギーであるという考え方をご紹介しておきたい。


世界中で広がる新しい色

 このように、エネルギーやお金を、単純な利便性や収益性だけで捉えるのではなく、そこに新しい価値や質を見出そうという考え方は、世界中で様々な形で行動に移されている。政策的にも自然(再生可能)エネルギーの例では、地球温暖化防止のために導入を推進する、買取制度や税制優遇が行われている。そんな中でまだ金額的な規模は限られているが、重要な役割を担っているのが、「環境倫理銀行」や「環境社会銀行」などと呼ばれる、専門の金融機関だ。比較的安い預金金利で預金を集めるなどして、環境やコミュニティにとって意義の高い事業に融資する。オランダのトリオドス銀行はその中でも有名で、イギリス、ベルギー、スペインにも拠点を持つまでに発展している。また、途上国においては、開発と環境・社会への影響を両立させるような、小口金融機関によるオフ・グリッド(送電線がない)の自然(再生可能)エネルギー投融資が注目されている。


サステイナビリティ・バンクを作ろう!

 新しい金融という意味では、日本でも上述の市民出資による発電事業のほか、市民バンクやNPOバンクという「市民金融」「金融NPO」という分野が生まれ、徐々に知名度を上げている。私はここで、こうした様々な機関や活動で、地域でのエネルギーとお金の循環を重視し、さらには地域の人材も活用しようとするものを、「サステイナビリティ・バンク」と呼んでみたい。色のあるお金やエネルギーをそうした「バンク」を通して作り出したり、さらにそこで働いたりすることができれば、地球や地域に貢献している感じがするし、新しい価値を生み出しているようで、とても充実して「楽しそう」と感じないだろうか。様々な新しい法人制度や組合制度を活用して、お金やエネルギーに関する十分な知識を持って「色」を与える、言い換えれば「価値」や「質」を表現しようとする動きが今後も増えていくことを期待したい。

「サステイナビリティ・バンク」のイメージについては次稿に譲らせていただきます。
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