Business & Economic Review 2009年7月号
【特集 世界経済危機と新たな金融システムの構築に向けて】
金融政策への教訓
2009年06月25日 バークレイズキャピタル 共同チーフエコノミスト イーサン・ハリス
目次
- 崩壊前のプライド
- そして今、状況は一変した
- 危機回避:ゼロではなく2%
- 危機回避:自国の安全
- 危機回避:規制
- 危機への対処:ステロイド(steroids)の量的緩和
- 危機への対処:コミュニケーション
- 今後の課題:ポートフォリオの圧縮
- 今後の課題:共同の独立宣言
- 事態ははるかに悪くなっていた可能性がある
- 評価できること
要約
経済金融危機により、わずか2年前までは当たり前と思われていたことの多くが疑問視されるようになった。連邦準備制度理事会(FRB)は、特に他の政策決定者と比較して、危機に際し迅速かつ創造的に行動したが、それでも学ぶべき重要な教訓がいくつかある。まず、最も重要なことは、中央銀行はリスク管理における自らの役割に関してはるかに広い視点を持ち、規制、監督、金融政策を通して、疑いのある資産バブルに圧力をかける必要があることである。第二に、この危機はゼロを大きく上回る水準にインフレ目標を設定し、大きな危機に直面した際に、銀行に金利を引き下げる十分な余地を与えることの重要性を浮き彫りにした。第三に、中央銀行は行動の背景にある論理を国民に説明するため、さらに多くの時間を割く必要がある。最後に、今後数年間に中央銀行が直面すると考えられる最大の課題は、政治的な介入を回避しつつ、膨張したバランスシートを元に戻すことである。深刻なインフレは、中央銀行の独立性が脅威にさらされた場合に初めて、真のリスクとなる。