Business & Economic Review 2009年5月号
【特集 人口減少下の都市・地域の再生】
女性就業率向上の阻害要因分析-地域特性に応じた対策が必要
2009年04月24日 調査部 ビジネス戦略研究センター 研究員 小西功二
要約
- 少子高齢化が進むわが国において、今後いかにして労働力を確保していくかは重要な課題である。その解決策の一つとして、女性労働力の一段の活用が有望視されている。このところ女性就業率に上昇の動きがみられるものの、その主因は非婚化、晩婚化であり、有配偶女性の就業率をいかに向上させるかが課題となる。
- 有配偶女性の就業率を都道府県別にみると、都市部よりも地方において高い傾向にある。さらに、地域別、年齢層別に就業率をみると、a.30歳代前半の就業率低下は都市部においてのみ確認される、b.50歳代の就業率の落ち込みは地方において急であり、都市部において緩やかである、という特徴を指摘できる。
- 就業率と家族類型の関係をみると、a.核家族世帯の割合が高い都市部ほど30歳代前半の就業率低下幅が大きい、b.3世代世帯の割合が高い地方ほど50歳代の就業率低下幅が大きい、という結果が得られた。こうした家族類型の違いを踏まえれば、都市部では育児が、地方では介護が、それぞれ有配偶女性就業の最大のネックであると言える。
- 都市部での育児問題、地方での介護問題という視点で就業率をみると、都市部においては、保育基盤が不足していることに加え、30歳代男女間の労働時間格差が大きく、夫の家事・育児参加が進んでいないことが影響している。一方、地方においては、採算確保の難しさを背景とした介護サービスの供給量不足が影響している。
- 以上の分析を踏まえると、女性就業率向上に向けて、a.核家族の多い都市部では、保育サービスの拡充、育児支援制度の充実に加えて、夫の家事・育児参加に向けて「柔軟な働き方」を推進することが重要である。b.3世代同居家族の多い地方では、介護サービスの供給量を拡大することが必要である。サービス供給の効率性確保の観点から、コンパクトなまちづくりを推進することが求められる。