コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Business & Economic Review 2009年3月号

【STUDIES】
グローバル金融危機とアジアの対応

2009年02月25日 調査部 環太平洋戦略研究センター 上席主任研究員 高安健一


要約

  1. 1997年の通貨危機を克服したアジア諸国は、グローバル金融危機(Global Financial Crisis)という新たな試練に直面している。二つの危機は、その背景や実体経済への波及経路をはじめとして多くの点で異なっている。

  2. グローバル金融危機がアジア経済に深刻なダメージを与えている背景として、流動性不足、輸出減少、国内消費市場の不振の三つが指摘できる。アジアが巨額の外貨準備を保有しているにもかかわらず深刻な流動性不足に陥っている背景には、2001年以降の国際的な過剰流動性の流入と、民間部門の対外資産負債バランスの悪化がある。個別国の動向をみると、2008年初頭より通貨価値が大きく下落している韓国とインドのバランスの悪化が目立つ。

  3. 韓国、タイ、マレーシアなどでは、企業の資金調達が苦しくなるなか、銀行部門への依存度が高まっている。アジアの多くの国々はグローバル金融危機の国内銀行部門への波及を抑えるべく、全額預金保護制度を導入している。

  4. アメリカとイギリスの国際ポジションの調整は対外資産と対外負債の双方で、2008年4~6月期にはじまった模様である。国際的に流動性が潤沢な時期に対外資産を大量に積み上げたアジアからアメリカに向けて、資金が円滑に流入するかが注目される。

  5. 国際協調体制を強化して取り組むべき最重要課題は、グローバルな流動性危機への対応ならびにその再発防止である。そのためには、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)の通貨スワップ協定、国際通貨基金(IMF)による緊急融資、アメリカを介さない2国間の流動性供給メカニズム、そしてアジアの域内協力などを活用することにより、重層的に取り組むべきである。

  6. わが国は、グローバル金融危機の解決に向けた国際協調に深くコミットすることになろう。国際的な対外資産負債の調整局面が世界の金融資本市場や実体経済に及ぼす悪影響を最小化すべく、日米欧諸国とアジアをはじめとする新興成長国が密接に協調することが強く望まれる。
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ