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Business & Economic Review 2008年08月号

【REPORT】
中小企業活性化の課題-「海外」「価格」「人材」戦略の再構築が急務

2008年07月25日 調査部 ビジネス戦略研究センター 研究員 小西功二


要約

  1. アメリカのサブプライム問題を契機とした金融市場の不安定化や、原油をはじめとする一次産品価格の高騰を背景に、わが国企業の景況感が悪化している。とりわけ、中小企業の落ち込みが大きく、大企業との業況格差は既往最大の水準で推移している。本稿では、大企業との比較を通じて格差拡大の要因を明らかにし、中小企業が目指すべき方向性と求められる政策プランを提示する。

  2. 中小企業の財務体質を大企業と比較すると、収益面、安全面で改善に遅れがみられる。しかし、単位当たり数値の推移をみると、財務体質の健全化は相当程度進展していると判断できる。むしろ、行き過ぎた財務リストラが、従業員のモラール低下を招く恐れすらある状況であり、業況悪化の主因が財務面にあるとは言い難い。

  3. 大企業との業況格差拡大の要因として、第1に、海外市場における売上高の違いが指摘できる。輸出比率は、大企業との格差が拡大する傾向にある。また、近年の海外生産比率の上昇は、主に大企業の動きを反映した結果であり、この背景には、中小企業の「国内市場志向」がある。第2に、価格コントロール力の違いが指摘できる。中小企業セクターの構造的問題を背景に、価格転嫁が進まない中小企業では、原材料費の高騰により収益が圧迫されている。

  4. こうしてみると、中小企業が取り組むべき課題は、経営戦略の重点を「コストダウン・財務スリム化」から「付加価値創造力強化・売上増強」へシフトすることといえる。そのためには、a.グローバルな視点に基づく販売市場の拡大、b.販売価格の維持・引き上げに向けた差別化路線の明確化、c.人材育成への注力の3点が重要である。政府には、中小企業の自助努力を後押しするような事業環境の整備が望まれる。
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