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Business & Economic Review 2008年06月号

【STUDIES】
コーポレート・レピュテーション:評価と管理-無形の資産による企業価値の創造

2008年05月25日 新美一正


要約

  1. コーポレート・レピュテーションは「企業の評判」や「風説」と訳される。語感の軽さとは対照的に、企業経営に与えるコーポレート・レピュテーションの影響力は、近年、ますます増大している。不祥事の露見などに端を発したコーポレート・レピュテーションの急激な低下が、企業経営の破綻に結び付くケースも決して例外的なものではない。

  2. 無形資産のなかでもコーポレート・レピュテーションは、とりわけその実態が捉え難い存在である。企業価値の増大に寄与するという意味で広義の無形資産(インタンジブルズ)を定義すると、それは知的資産とレピュテーション資産に大別される。さらに、このレピュテーション資産は、ブランド・エクイティ(資産)とコーポレート・レピュテーションに細分化される。レピュテーションとブランドは非常に似通った性格を有しているが、「差別化の有無」によって識別することができる。ブランドは、他社との差別化を目的に構築されるのに対し、コーポレート・レピュテーションは、経営者・従業員の行動を通じて導かれる持続可能な競争優位であって、差別化とは無関係に構築される。従って、レピュテーションの向上は、ブランド力の引き上げよりは容易であるが、半面、持続的な競争優位性は容易に競争劣位に転じ得る(レピュテーション資産→負債への転化)ので、レピュテーションを通じた企業価値の創造や、レピュテーション・リスクの適切な管理は重要な経営上の課題である。

  3. コーポレート・レピュテーションを生み出す源泉はさまざまなので、その価値を財務的に測定・管理することは非常に困難である。コーポレート・レピュテーションを定量的に評価・管理する手法としては、Kaplan and Norton[1996][4]によって開発された「バランスト・スコアカード(balanced scorecard BSC)」が有望である。BSCでは、何らかの形で数量化されるという条件さえ満たせば、財務指標以外の項目を評価指標に加えることができるためである。本稿では、櫻井[2005b][18]などの先行研究に依拠して、(1)人的資源の視点、(2)内部ビジネス・プロセスの視点、(3)顧客と社会の視点、(4)財務の視点、の四つの視点を設定し、BSCによるレピュテーショ
    ン管理のための基本的なスキーム作りを試みた。

  4. 本稿で行ったコーポレート・レピュテーションの決定要因に対する実証的な分析は、国内企業を対象とした研究としてはほとんど前例のない試みである。分析結果からは、株式の投資家がコーポレート・レピュテーションへの評価に基づいて投資行動を行っていること、また、広告宣伝活動がレピュテーションの形成に対して有意な影響力を持っていること、などを示唆する興味深いファクト・ファインディングが得られた。
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